2013年9月19日木曜日

恐るべきアメリカ弁護士のチャージ

クライアントに対するPre-billをチェックしていたところ、進行していないケースに関してチャージがついているのに気付いた。何故チャージ時間がついているのかと不思議に思って内容を確認すると、ある弁護士が、私と事件に関してコンファレンスをしたとして0.4時間つけていた。0.4時間と言っても馬鹿にならない時間である。彼のアワリーレートは750ドルだからだ。300ドルになる。
そういえば、チャージをした弁護士と「あのケース進行が止まっているけれども・・・」という世間話をしたのを思い出した。それも3分くらいである。0.4時間は、24分であり、実際にかかった時間の8倍である。

普段不機嫌そうにしているその弁護士が、やたらニコニコと話しをしてくるなあとは感じていた。こういうことだったのか。私と話している時間をクライアントにチャージできると思ったのか。

このようなチャージをする弁護士は淘汰されると思うかもしれないが、そうでないのが怖いところである。アメリカの法律事務所はこのような弁護士をむしろ歓迎しているようである。チャージ時間が一定時間に達しない弁護士は事務所を追い出される。弁護士達は必死になってチャージする。パートナーは自分のクライアントでなければ、かまわずチャージする。そのクライアントが逃げていっても、自分のクライアントでないからかまわないのである。それより、目先のチャージ時間数達成の方が大事である。それによって、自分のボーナスなどが決まるからである。実際、リーマンショックの際に、パートナー以外の弁護士に関して言えば、仕事を早く済ませてチャージ時間が少ない弁護士はリストラされ、時間をだらだらとつける弁護士が生き残っていた。

事務所を辞めさせられる恐怖、一度得たステイタスを失う恐怖は人間の良心を蝕んでいく。ここで書いたことはたかが300ドルであるが、誰も注意しないと、これがどんどん膨れ上がるのである。また、同じ案件に係わる複数の弁護士が少しずつでも毎日、多めに時間をつけていけば、不当な時間数はどんどん膨れ上がる。

大手事務所はすべて同じような経営方針をとっているので、どの法律事務所に依頼しても多かれ少なかれ同じようなことが起こる。高すぎるからといって淘汰されないのである。アメリカではディスカウントしてる小規模事務所の信用性は低く、ある程度の規模の企業になると、弁護士のノルマの厳しい大手事務所に依頼せざるを得ない。