2017年6月19日月曜日

日本の弁護士資格が有益な場合

日本の弁護士資格が有益な場合として一つ考えられるのは、カリフォルニア州の司法試験の受験資格を得られることだ。

ひと昔前までは、日本の弁理士の資格でもカリフォルニア州の司法試験を受験できたそうだが、もう、それはできなくなった。アメリカでPatent attorneyというと、弁護士資格と弁理士資格と両方の資格を持っている場合を指し、弁理士資格のみを有する場合は、Patent Agentと呼ぶ。日本では、弁理士会が会の名前を英訳するときにJapan Patent Attorneys Associationと訳しており、日本の弁理士の方々は自己紹介を英語でするときに、Japanese Patent Attorneyであると言っている。これが理由なのか、外国の弁護士に受験資格を認めていたカリフォルニア州は、日本の弁理士にも受験資格を認めていたようだ。しかし、最近認められなくなった。

カリフォルニア州で弁護士として登録して5年間何も問題がなければ、今度はワシントンDCの弁護士として弁護士登録することができる。

重要なのは、日本には、予備試験があり、頭が良ければ法科大学院に通う必要がない。さらには、修習の給付制度が復活したようなので、予備試験、司法試験、給付制の司法修習を経て、カリフォルニア州の司法試験に合格すれば、ロースクールの学費を支払うことなく米国弁護士になれるということである。米国のロースクールは信じられないほど学費が高い。これを支払わないでアメリカの弁護士になれるなんて、アメリカ人から羨ましがられるだろう。
人生の最初に借金まみれにならなくてもすむのである。
補足すると、カリフォルニア州は、今まで3日間であった試験の日程が他の州と同じように2日間に短縮された。

最後に問題になるのは、カリフォルニア州の弁護士資格を得た後に、会費が高い日本の弁護士登録を続けるべきか否かということに尽きる。


もし、アメリカに留学したいのであれば、ロースクールに留学するのではなく、ビジネススクールに留学するのが良いと思う。ロースクールはただひたすら言われた課題を読んで、一人で勉強することにほとんどの時間を費やさなければならないが、ビジネススクールであれば、グループごとにプレゼンをすることも多く、他の学生と共同で話し合いながら課題をこなしていく機会が多い。また、ビジネスにネットワークは重要であるとの認識から、アメリカ人学生が海外の学生とのネットワークを広げることにも積極的である。

2017年6月6日火曜日

情報の非対称性による逆選択

出張で日本の飛行機に乗った時に何気なく見た番組で説明されていた「情報の非対称性による逆選択」という言葉が今の日本の弁護士業界に当てはまるような気がしてならない。

番組では、消費者と生産者側の情報量が対象でない場合、つまり、消費者側に情報があまりなく、生産者側に情報が偏っている場合をを「情報の非対称性」というと説明があり、その例に、ワインが挙げられていた。それだけなら、「なるほど」という程度である。

面白いと思った話はプレミアムワインと普通のワインの例である。例えば、高いプレミアムワインと安い普通のワインがあり、消費者側がどうしてプレミアムワインが高いのか、その情報がない場合、分からない場合、プレミアムワインを選ばなくなり、プレミアムワインが売れなくなるので、最終的に、プレミアムワインは市場から消え、消費者がプレミアムワインと楽しむことができなくなるという話である。

これは、まさしく、今の弁護士業界に当てはまるのではないか。大手企業などは、インハウス弁護士も複数いるので、弁護士業務に関する情報も豊富で、プレミアム・リーガルサービスを受けるために高額な弁護士費用を支払う動機もある。これに対して一般の一生に1回弁護士に依頼するかどうかという程度の個人だと、弁護士業務や特定の弁護士に関する正確な情報があまりなく、「情報の非対称性」がそのまま当てはまる。そうすると、安いサービスを提供する弁護士がいれば、高い費用を支払ってプレミアム・リーガルサービスを受けるという動機もなくなり、プレミアムサービスを提供する弁護士は市場からいなくなるのではないか。

つまり、大手企業に対してリーガルサービスを提供する事務所はプレミアム・リーガルフィーを請求しても生き残れるが、一般消費者向けにリーガルサービスを提供する事務所は、プレミアム・リーガルフィーを請求する事務所は生き残れなくなり、料金を安くして薄利多売などの方法で生き残るしかなくなるのではないか。