2014年2月4日火曜日

クラスアクション制度、懲罰賠償制度、ディスカバリー制度を日本でも採用すべきか?

日本にはアメリカのような訴訟の数を増やすために必要な条件が揃っているという投稿をしたことがある。日本でもアメリカと同じように訴訟の数を増やすための制度、例えば、クラスアクション制度、懲罰賠償制度、ディスカバリー制度等のある意味、訴訟を提起された側の負担はかなり増すけれども、訴訟の数を増やす方向に向かう制度を導入しようという話しが持ち上がるかもしれないし、ある分野では実際に持ち上がっているようだが、



少し警笛を鳴らしたい。



日本企業がアメリカに進出する際、通常のビジネス感覚があれば、アメリカ進出によって得られる利益とアメリカ進出による危険を分析してビジネス判断を下すであろう。アメリカに進出する企業は訴訟を起こされる可能性や、そうなった場合の負担などのリーガル上の危険が日本に比較して膨大であることを十分認識しているであろう。それでもアメリカに進出するには、危険以上のアメリカに進出する魅力があるからである。


日本が、日本で事業を拡大する魅力を増大させることなしに、リーガル上の負担だけを増大させたら、どうなるだろうか。日本の優良企業が外を向いてしまうのではないか。また、海外の企業も日本に進出しなくなるのではないか。


例えば、日本とアメリカの人口比較を例にとって考えよう。
現在の日本の人口は、2014年1月1日現在で1億2722万人と言われているが、アメリカの人口は3億1700万人と言われている。アメリカは毎年人口が着実に増えているので、毎年人口が減り続けている日本の人口がアメリカの人口の3分の1以下になるのは時間の問題である。また、少子高齢化により、高齢者の比率が諸外国では考えられないほど高くなっている。
ちなみに1990年のアメリカの人口は2億5000万人で、日本の約2倍であった。

何が言いたいのかというと、人口の減少により購買力のある人口が減っている日本、今後の高齢化により購買意欲がある人口の割合が減ってくる日本に企業が魅力を感じるのかと問いかけたい。
現在は年金が保証されている高齢者が多いので高齢者にも購買欲があるが、これから年金支給開始年齢が上がれば、高齢者は生活最低限の物しか購入できなくなる。
日本のマーケットとしての価値が低下していくのである。



日本と対照的に、アメリカは先進国の中で一番高齢化が進んでいないし、移民を受け入れていることもあって人口が毎年着実に増え続けている。購買欲があって、ある程度高価なものを購入できる人が多く住んでいる魅力的なマーケットである。また、アメリカで企業の知名度が上がれば、その他の国でも知名度が上がり、グローバル企業になるための足がかりにもなる。

若干の危険があっても、魅力がそれをはるかに上回るので、企業としては進出に踏み切るのである。

人口減少と購買意欲のある人口比率が減ることが確実な日本はマーケットとして魅力がなくなっていく。それに輪をかけてリーガルの負担を増大させたら、日本はさらに魅力のないマーケットとなるのではないか。

既に、長く続いた円高によって日本企業の工場は海外に拠点を移してしまい、せっかくの円安があまり還元されていないと言われている。

日本が訴訟社会になれば、日本の優良企業はさらに海外を向くようになるのではないか。それにともなって、結局、日本企業の海外進出に関するリーガルサービスを手がけられるような弁護士の需要が高まるだけで、国内専門の弁護士の需要が高まるとは思えないのは私だけだろうか。