2015年4月12日日曜日

弁護士を雇うのは一苦労

日本でもアメリカでも大きく分けて二種類の弁護士の求人がありうる。一つは、未経験者で、もう一つは経験者である。

未経験者を雇うのは、大いなるリスクである。使えるようになるかもしれないし、ならないかもしれない。弁護士という資格が簡単に取得できるアメリカでは、弁護士という資格を持っている人を雇ったからといって使えるようになるかどうかわからない。また、もし使えるようになったとしても、その途端に、もっと給料の高い事務所に移籍してしまうかもしれない。

そこで、大手事務所以外は、経験者を雇おうとする傾向が強い。しかし、適当な経験弁護士を見つけるのは一苦労である。
アメリカには弁護士が星の数ほどいるのだから簡単なことではないかと思うかもしれないが、それは大間違いである。
たとえば、ロースクールを卒業して司法試験に合格した人が、年間1万人いたと仮定しよう。しかし、ロースクールを卒業後にロースクールの新卒として、企業法務の実務経験を得られる職に就ける数が2000人だったと想定しよう。残りの8000人はロースクールを卒業した未経験者でしかない。彼らは翌年になっても翌々年になっても企業法務未経験者のままである。つまり、毎年未経験者を雇う大手事務所であっても、今年ロースクールを卒業した未経験者を雇うのであって、1年前にロースクールを卒業した未経験者を雇うことはないのである。

つまり、どんなに弁護士を増やしても、経験豊富な弁護士が増えることはないのである。経験を積むという重要な部分は、最初の就職という入り口で絞られてしまい、経験弁護士の数は増えないのである。

更に、経験を得る機会を与えられた2000人も簡単な司法試験を合格したというだけなので、必ずしも優秀な弁護士に育つという保証はないのである。たとえば、日本の旧司法試験くらい難しい試験に合格した人であれば、実務経験があれば、95%が優秀な弁護士に育ったのに、簡単な試験に合格しただけの人が実務経験を得ても70%しか、優秀な弁護士に育たないという感じである(パーセントは分かりやすいように適当な数字を入れただけである)。
つまり、弁護士になれるものを試験で厳選して2000人に絞っていれば、2000人のうち1900人の優秀な経験のある弁護士が発生したのに、司法試験を簡単にしたことによって、1400人の優秀な経験のある弁護士しか発生しない計算になる。

つまり、星の数ほど弁護士がいるために、逆に優秀で適切な経験を経た弁護士の数が少なくなり、経験弁護士を雇うのが難しくなるのである。皮肉な結果である。