大手事務所のアソシエイトは給料も高いが、ノルマもきつい。事務所によってばらつきもあるが、1年目で約16万ドルの給料がもらえる。現在円高なので、1280万円程度であるが、リーマンショック前の為替レートでは1600万円を超えている。
それでは、彼らに課されているノルマは何なのであろうか。事務所によって差があるが、年間1800から2200時間Billable hour(ビラブルアワーといって、クライアントにチャージできる時間数)を付けるようにとのノルマがある。クリスマスバケーションやサマーバケーションを考えると、この時間を単純に12ヶ月で割るわけには行かない。11.3ヶ月で割ってみると、月に159時間から195時間のビラブルアワーが必要になる。1ヶ月は22日くらいなので、1日にすると7.2から8.9時間のビラブルアワーが必要になる。しかし、クライアントに請求できる時間を一日8時間とは、真面目に正直に時間をつけると大変である。クライアントにチャージできる時間は一日の中でそれほど多くない。もちろん、最新判例を勉強したり、法律雑誌に原稿書いたり、所内でのセミナーの準備、営業もかねてのクライアントからのちょっとした質問に答えたりするのは、全てビラブルではない。
2000時間でも大変なのに、東京にもオフィスがある有名な某事務所のノルマは年間2400時間だというのだから驚く。
このビラブルアワーがある一定時間に達しないと何が起こるかといえば、リストラされる可能性が高くなる。リーマンショック後、弁護士事務所の仕事自体減少傾向にあるが、仕事がなければビラブルアワーどころではない。しかし、この目標を達成しなければリストラの危険がある。どう考えても仕事をだらだらやって時間をつけているとしか思えない弁護士もいる。クライアントが多いパートナーにうまく気に入られて、仕事を回してもらえるようにと工作する者、オフィスでの電話会議中にこっそりと他のクライアントの仕事をして、2時間の電話会議だったのに、2時間の電話会議プラス別件の書面作成時間1時間が加わって何故か合計3時間のビラブルアワーがついている者、生き残るためにはどんな工夫もいとわない。生活がかかっている。リストラされてしまっては、ロースクール時代の1000万円以上の借金が返済できない。
ビラブルアワーが一定時間を越えると、ボーナスがもらえるのである。クライアントのことを考えて少なめに時間をつけるインセンティブなどどこにもない。あとは、クライアント自身が文句をつけるか、そのクライアントを担当しているパートナーが請求書をチェックして弁護士のビラブルアワーを削るかである。ただ、ビラブルアワーをかなり削るのは事務所内の規則やパートナーの事務所内での権力等が左右するので、そう簡単にはいかない。