2015年7月30日木曜日

クライアントの能力が弁護士評価能力の限界


知人が、クライアント能力限界説をとっているという。一言で言えば、クライアントの能力の限界が弁護士評価能力の限界であるというのだ。

弁護士がいくら良い仕事をしたとしても、依頼者にそれが良い仕事であるかどうかを判断できるだけの能力がなければ、依頼者は良い仕事であるとの評価をすることができない。オフィスが古いとか、仕事と直接関係ない要素に気を取られ、悪い仕事だと勘違いしてしまう危険がある。逆に弁護士があまり良い仕事をしなかったとしても、依頼者がそれを評価できるだけの能力がなければ、その他仕事と直接関係ない要素に騙されて良い仕事だという間違った評価をしてしまう危険性がある。

弁護士の仕事の評価は、クライアントの能力という厚い壁があって、その限界を超えることができないのだ。

私の知人がとっている説であるが、これに賛成する弁護士は多いはずである。だからこそ、弁護士の数を増やして自由市場で淘汰させようとしても、成功しないのである。

弁護士の能力を的確に評価できる依頼者がどれほどいるのだろうか。的確な評価をできる依頼者がいなければ、自由市場で淘汰される弁護士は無能な弁護士とは限らなくなる。







2015年7月25日土曜日

優秀だけれどもコネがない場合

優秀だけれどもコネがない人はアメリカの弁護士になって成功できるのかについて、一言述べておこう。

結論として、優秀であると言うだけでは、成功できない。コミュニケーション能力が高いことが必須条件である。さらに、運が良いことも必要である。


ここで言っているコミュニケーション能力が高いという意味を説明しよう。


コネのない優秀な人が大手事務所に就職するためには、ロースクール1年目で非常に良い成績を取得し、大手事務所のサマーアソシエイトとして働くことが必要になる。サマーアソシエイトとして働いている時は、皆に気に入られるようにすることが重要である。間違っても、こいつは雇いたくないと思われるようなことをしてはいけない。

その後、アソシエイトとしてサマーアソシエイトとして働いた事務所に就職できた場合、複数のパートナーに気に入られることが重要である。気に入られるためには、そのパートナーが使いやすいアソシエイトになることである。使いやすいアソシエイトになるためには、仕事の質さえよければよいと言うものではない。パートナーからメールが来たら、直ぐに返事をし、何か頼まれたら、「喜んでやります」と引き受け、期限よりも少し早い時期に仕事を終わらせることが重要である。

如何に優秀であっても、パートナーに「あんた頭が悪いんじゃないの。分かってるの?そこ間違っているよ。」というような雰囲気が見られる接し方をしたら、NGである。パートナーのプライドを傷つけない、パートナーを快適な気持ちにさせるような接し方で、間違いを指摘できることも重要である。

また、クライアントに気に入られることも重要であるが、間違っても、パートナーが、「こいつ俺のクライアントを盗むのでは」と不審に思うような付き合い方をしてはいけない。少なくともその事務所にいる間は、「このクライアントはあなたのクライアントだと言うことを分かっていて、盗むようなまねはしません」という無言のメッセージを発信し続けなければならない。

さらに、1人のパートナーだけに気に入られて他のパートナーに気に入られないのもNGである。アメリカのクライアントは、日本企業のように、弁護士事務所について忠実ではない。法務部の部長が変わった直後に、他の事務所に仕事を頼むことにしたからといなくなることもある。その際に、他のパートナーに気に入られていなかったら、自分に仕事をくれる人がいなくなってしまう。そうすれば、要求される時間をつけることができなくなり、自分は真っ先に首を切られてしまう。複数のパートナーから気に入られて、仕事をもらえることが必要である。

同僚のアソシエイトにも気に入られておくことも重要である。3年~5年くらい大手法律事務所で経験を積んだ弁護士が企業のインハウス弁護士として就職することは多く、インハウスになった元同僚弁護士に気に入られておけば、将来、その会社が元同僚を通じて自分のクライアントになってくれる可能性もある。

また、パートナーや同僚弁護士に気に入られることは、将来、自分のいる事務所の雲行きが怪しくなった時に、直ぐに他の就職先を見つけるカギとなる。アメリカでは元一緒に働いていた弁護士から引っ張られて転職するというのが非常に多い。多くの元同僚弁護士と仲良くしておいて、定期的に連絡を取っていたら、そのうちの一人が、急に多くの仕事を引き受けて一緒に働ける弁護士をさがしているということもある。その際に、「そうだ、あいつを引っ張ろう」と思わせることが必要である。

加えて、日ごろからネットワークの重要性を認識して、どこからどんなクライアントさんがやってくるかアンテナを張っておく必要がある。そのためには、コミュニケーション能力の高さ、人からこいつには仕事を頼んでみたいと思わせるパーソナリティーが必要である。


優秀だけれどもコミュニケーション能力がゼロの人が弁護士になった場合にどうなるかは書かないが、容易に想像できるであろう。成功する可能性は非常に低い。


優秀だけれどもコネがない人は、コミュニケーション能力が非常に高い場合を除いて、弁護士になるべきではない。

2015年7月4日土曜日

ロースクールに行ってよい例外的な場合(アメリカ編)

前にロースクールに行ってもよい例外的な場合の日本編を書いたが、アメリカの弁護士とロースクールに行ってもよい例外的な場合のアメリカ編について話し合ってみた。
驚いたことに皆の意見は一致した。

ロースクールに行ってもよい人は、数多くのコネがある人である。

事務所とコネがあると言う意味ではなく、クライアントとなりそうな大手企業との何らかのコネがたくさんあることである。親や親せきを通じたコネでも良いし、自分自身のコネでもよい。クライアントになりそうな企業との強いコネクションのリストがあるかによって大手事務所で生き残れるかが決まるからだ。

そこで、こんな話を思い出した。

ある韓国の大企業のお偉いさんを親戚に持つ韓国人が、アメリカのロースクールを卒業してアメリカの超大手の事務所に就職した。今、アメリカの景気が良くなっているので、H1Bビザの年間の発行制限を大幅に上回るビザ応募があり、まず最初に抽選が行われて、その抽選に外れると、ビザ申請の手続きに進めない。つまりアメリカでは働けなくなる。しかし、その大手事務所のパートナー弁護士は、その韓国人に、ビザは大丈夫、こっちで何とかするからと言って、何をやったか分からないがビザを取得したというのだ。その事務所はその大手韓国企業の仕事を担当しているということだ。何としても、その大手企業のお偉いさんの親戚の韓国人を身内に引き入れたかったわけだ。


アメリカ型の法曹界では、コネがすべてである。