2014年5月16日金曜日

儲かる仕事は外資系法律事務所の手に?

このブログを書き始めてからずっと気になっていたことが着々と現実になっているのではないか。

気になっていることとは、海外とのかかわりのある日本の企業は、外資系法律事務所に仕事を依頼せざるを得なくなり、最終的に日本の事務所は小規模な企業か個人に関する法律問題というあまり儲からない数少ないパイを皆で奪い合う時代がくるのではないかということである。

上記が現実となるために必要なことは主に3つだろう。まずは、優秀な人が日本の弁護士資格取得を目指さなって、日本の弁護士はアメリカの弁護士より優秀であるという認識がなくなることである。2つ目は外国法事務弁護士や外資系法律事務所が日本でリーガルサービスを提供しやすいように日本の法制度が改正されることである。3つ目は日本企業の海外での活動が増えることである。

最近、全ての条件が揃い始めている。

1つ目の条件に関し、司法改革の失敗から優秀な人材が法曹を目指さなくなってきたことが指摘され始めている。加えて、優秀層が挑戦する予備試験に受験制限を求めようという動きまであるようだ。
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2014/pdf/140509b.pdf

これによって、金のない優秀な人のみならず、金持ちの家に育った優秀層も考え方を変えるかもしれない。日本の法律資格を取っても金があって能力がないとのレッテルを貼られる可能性があるので日本の法曹を目指さなくなるかもしれない。

1つ目の条件を満たしたとしても、海外の弁護士資格取得者に対する日本での活動範囲の制限があれば日本の法律事務所は守られ続けるだろう。しかし、その制限が徐々になくなっているようだ。この動きはさらに加速するだろう。
http://www.bengo4.com/topics/1421/

3つ目の条件に関してであるが、人口減少によるマーケットの縮小やグローバル化などにより、外を向いている日本企業が非常に増えてきた。日本の中だけで解決できない法律問題が一気に増えてきている。

日本の大手事務所も必死になって海外オフィスを作っているが、少なくなってきた国内向けの仕事だけでは、巨大化した事務所維持は大変なのかもしれない。

優秀な人材とクライアントが外資系法律事務所に吸い上げられてしまうと、日本の事務所はひとたまりもない。資金力のある外資系事務所は高い初任給で日本の資格を持った優秀層を囲い込む力がある。既に、日本の大手事務所の中には、1000万円を下回る初任給しか出せなくなっているところも出ているようだ。600万円を法科大学院の学費として費やし、卒業後最短でも司法修習が終わるまでの1年9ヶ月くらいの生活費を借金するか親から支援を受けるにより何とか切り抜けてでも弁護士になろうという思わせるためには1000万円以上の初任給は必要であろう。以前と比較すればかなり円安になった現在、外資系法律事務所にとって日本円で1000万円を超える初任給を支払うことは容易である。

海外関連の法律問題がある企業(クライアント)も徐々に外資系法律事務所に吸い上げられているようだ。海外に関する案件はどの国に関しても英語で行われることが多い。わずか2年程度を海外で過ごした日本人が常日英語で仕事をしている外資系事務所の弁護士に勝る仕事をするためにはよほど優秀でなければならない。しかし、優秀層は着実に減ってきている。日本の法律事務所が単に外国の事務所とクライアントとの仲介をするだけであれば、直接外資系法律事務所に依頼した方が良いと思うクライアントが増えてもおかしくないだろう。日本の法律事務に関しても外資系事務所に吸い上げられてしまった数少ない優秀な日本の弁護士に依頼するのがよいということになるかもしれない。

今まで、国内案件が主であった企業は国内の事務所を主の事務所として、海外案件があるときはその事務所を通じて海外の事務所を使ったかも知れない。しかし、海外案件で弁護士を使うことの方が国内案件で弁護士を使うことより多い企業であれば、主の事務所を外資系法律事務所として、国内案件についても同じ外資系事務所の日本弁護士を使うことになるだろう。

このようにして、徐々に、外資系事務所との結びつきがない日本の法律事務所は企業にとって使い勝手が悪いとみなされるようになってきているのではないか。

既に外資系事務所と運命を共にするとの決定をした日本の比較的大きな事務所もある。
http://www.bingham.com/Offices/Tokyo
http://www.bakermckenzie.co.jp/e/
http://www.mofo.jp/

日本にオフィスを置いている外資系法律事務所は数え切れないほどある(思いついたものをいくつかあげておく)。
http://www.linklaters.com/Locations/Pages/JapanTR.aspx
http://www.ommtokyo.jp/
http://www.whitecase.com/ja-JP/Locations/OfficeDetail.aspx?office=42
http://www.dlapiper.com/ja/japan/insights/publications/2012/07/dla-piper-in-tokyo/
http://www.morganlewis.jp/index.cfm/fuseaction/content.page/nodeID/0cd6afdf-6aa2-46d2-96d0-df6aee7e5abb/
http://japan.squiresanders.com/ja/lmshome.aspx
http://www.hoganlovells.jp/ja/offices/Office.aspx?office=12
http://www.lw.com/offices/tokyo
http://www.foley.com/ll-ja-jp/japan/
http://www.paulhastings.com/ja/about-us
http://www.cliffordchance.jp/


断っておくが、これらの外資系大手事務所は有名ロースクールを優秀な成績で卒業した者しか雇わない。


予備試験の受験制限ができれば、旧司法試験組みがいなくなる頃には、企業法務と言えばたとえ日本法に関する企業法務であっても外資系事務所に依頼するという時代が来るかもしれない。予備試験の受験制限を唱えている財界人は、そこまで考えているのだろうか。