2014年5月26日月曜日

エクイティーパートナーの悲劇

3年位前、資金繰りの問題で解散した大手事務所のエクイティーパートナーであった弁護士と話をした。
クライアントの多い稼ぎの良い弁護士がどんどん移籍したため事務所のコストを支払い続けることが出来なくなったのである。


エクイティーパートナーとは、事務所のエクイティーを持っているパートナーのことで、事務所の経費を全部支払った後の残りの利益の分配を受ける権利を持っている。多くの事務所はエクイティーパートナーになる条件として巨額のお金を支払うことを求め、その支払いのために銀行から借金をする弁護士が多い。事務所がうまくいっている時の利益は多いが、事務所の利益がない場合には、全く利益を受け取ることが出来ないことになっている。事務所が破産しても、拠出した金は戻ってこない。つまり、拠出金のための借金はそのまま残ることになる。


「もう、随分経ったのに、未だにエクイティーパートナーだったからと言って訴えられる。事務所から得た利益を全部返して事務所の負債を返済しろと言ってくる。もう、エクイティーパートナーにはなりたくない」と話していた。


エクイティーパートナーだった頃は収入も多かったのではないかと聞くと、具体的な額には言及しなかったが、事務所の経営がうまくいっていた頃はかなりの収入を得ていたようだ。


事務所の稼ぎ頭の部署が部署ごと他の大手事務所に移籍してしまってから、事務所の経営がおかしくなったようだが、おかしくなり始めて直ぐに事務所から移籍してしまったエクイティーパートナーは巨額の収入だけ得て、訴えられる等の不利益を受けることなく逃げ切ったようだ。


その、元エクイティーパートナーが、最後に自分の娘の話をしていたのが印象的だった。
「娘に、『ロースクールには絶対に行くな。弁護士には絶対なるな』といったのだが、娘はロースクールに入学してしまった。有名なロースクールを卒業しても70パーセントしか就職が出来ない時代だ。それなのに、娘はロースクールの一学期だけで3万ドル(1ドル100円で300万円)もの借金を負ってしまった。大学卒業直後に何の専門もない学生がロースクールに行っても、簡単に就職できないだろう。それでもたくさんの学生がロースクールに行く。現状はある程度分かっていても、『自分だけは違う。自分は他より頭が良い。稼ぎの良い仕事に就ける。』って思うのだろうけれども、そんなことはないんだよ。」


ロースクールを卒業するには、6学期あるので、卒業時点での借金の予想額は単純に計算すると300万円×6で1800万円となる。