2012年12月1日土曜日

パートナーにも格付けあり その2


つづき

サービスパートナーは、クライアントに自分をアピールしてビジネスを獲得するということがあまり得意でない人が多いので、他のパートナーのクライアントを奪うような能力がなさそうであり、若干頼りなく見えるのが特徴である。ただ、ある程度仕事はでき、法律もよく知っているので、任せておけるというタイプである。クライアントを持っているパートナーが仕事を与えてくれなくなったら、事務所を辞めるしか道がないので、仕事を与えてくれるパートナーの言いなりになっている場合が多い。通常、アソシエイトより高額な固定給をもらっていて、アソシエイトと同様に年間のビラブルアワーのノルマがきつい場合が多い(「大手事務所のアソシエイトに課されたノルマ」参照)。また、事務所の仕事量が減るとリストラされやすいという特徴がある。自分で魚を釣ることができない船乗りは、どんなに魚をさばいて料理をするのが上手でも不漁が続けば船から降ろされるわけである。リーマンショック後には多数のサービスパートナーが荒波に投げ出された。

ここで一つ断っておくが、クライアントが事務所についている日本と違って、クライアントは弁護士についているのが一般的なアメリカの傾向である。日本企業は猫型クライアントでアメリカ企業は犬型クライアントと命名できるかもしれない。従って、パートナーが事務所を移籍すると一般的にはクライアントも一緒に移籍してしまう。

つまり、事務所としては利益を多くもたらすクライアントをしっかり確保しているパートナーを引き止めておく必要がある。例えば、年間10億円の売り上げがあるパートナーがクライアントと共に他の事務所に移籍すれば、事務所の経営も揺るがしかねない。つまり、彼らを怒らせないように、気を使う。事務所内での権力が違ってくるのだ。同じパートナーであっても、サービス・パートナーとは雲泥の差である。

このパートナーの格差が秘書たちにも影響を及ぼすことすらある。クライアントが多いパートナーの秘書がマネジメントに何か依頼するとすぐ処理してもらえることが、サービス・パートナーの秘書が依頼すると2日、3日余計に時間がかかったりすることもある。

英語は日本語のような敬語がなく、気軽にファーストネームで呼び合って皆フレンドリーに仕事しているように見えるが、クライアントを持つ者、持たない者との間に見えない壁が立ちはだかっている。