2013年4月6日土曜日

アメリカのロースクールをでれば日本人でもアメリカの弁護士になれるのか?


以前「日本の大企業就職には米国弁護士資格の方が有利?」と題する投稿で、日本の大企業に就職するなら日本の資格よりもアメリカのロースクールでLL.M.を取得してアメリカの弁護士資格を取得したほうが有利かも知れないという話しをした。この投稿へのアクセスが多いので誤解がないように一言述べておこう。

アメリカのロースクールを卒業しても、アメリカの弁護士としてアメリカで就職できるとは限らない。日本人にとってその可能性は極端に低い。

ブログの中にはアメリカのロースクールで1年のプログラムのLL.M.ではなく3年のプログラムであるJDをとればアメリカで就職できると記載しているものもある。確かに、LL.M.を卒業しただけではアメリカの法律事務所に就職するのはかなり困難である。しかし、だからといってJDをとればアメリカで弁護士として就職できるというのは全くの誤解である。アメリカで就職できる保障など何もない。3年のJDプログラムを出ると、逆に新卒として日本企業で就職する道を閉ざす可能性すらある。

アメリカでアメリカの法律事務所に就職したいのであれば、アメリカ人と同様に、有名なロースクールを優秀な成績で卒業しなければならない。日本が第2の経済大国であった時代には、日本人であるということはアドバンテージであった。しかし、現在では、失われた20年により経済的に衰退していく日本の言葉が話せるということは、少しプラスが付く程度である。アメリカの事務所の中には中国語を話せる人材に注目し始めたところもある。また、最近ではアメリカ人弁護士と不自由なくコミュニケーションがとれる人材が日本の大企業にはいるので、アメリカの法律事務所が日本企業をクライアントとするために日本語が話せる弁護士を雇う必要はないのである。日本人がアメリカの法律事務所に就職するためにアメリカ人と同じ土俵で戦わなければならない。自分を雇えばクライアントを確実に引っ張ってこれると法律事務所のパートナーを説得できれば話は別であるが(自分の親戚は大企業の取締役であるので自分を雇えば絶対に仕事が来る等)、そのようなコネのある人は極わずかである。

アメリカのロースクールで3年間と巨額の学費をかけてJDを取得したはいいが、中大手法律事務所に就職することができずに、小さな移民法専門事務所で日本人のためにビザを申請している弁護士や、派遣弁護士として、派遣会社に登録して、日本語のドキュメントレビューをやっている日本人は数多くいる。たとえ、運よくアメリカの大手法律事務所に就職できても、東京オフィスに移るか、事務所を辞めるかという選択を迫られ、最終的に東京オフィスに移って、アメリカのプラクティスの一線からは退き、日本のクライアント担当のような仕事をしている人もいる

日本の大学を卒業した直後にLL.M.を取得して日本の大企業に就職するなら年齢も若く、アドバンテージがあるが、JDを取得するには3年かかり、司法試験の発表を待つと、3年半以上かかる。つまり、日本の大企業に新卒として就職するのが難しくなる。つまり、アメリカでも日本でも就職できなくなる危険性がある。アメリカのロースクールでJDプログラムに入ることを考えている場合には、3年以上の期間をかけて高額の学費を払うのに見合うだけの見返りがあるのか、将来設計を十分にする必要があるだろう。