2013年7月27日土曜日

司法試験合格率のトリック


ニューヨーク州の司法試験の合格率は全米的に見ると低く、ニューヨーク州の司法試験は他の州と比較して難しいと言う人がいるが、それは間違いだと思う。受験する人のレベルによるだけである。ニューヨーク州は、LL.M.という1年ロースクールのコースを修了した人にも受験資格を与えている数少ない州の一つである。LL.M.の受験資格で受験する人のほとんどは、英語は第2外国語である。彼らの合格率は実に30パーセント台なのである。これに対し、JDという3年のロースクールのコースを修了した人たち(メインはアメリカ人)の合格率は実に80パーセントを超えている(7月実施の試験の場合)。合格率の低いLL.M.卒業生の合格率を単純に一緒にしてしまえば、合格率が6575パーセントと低くなるのも当然である(7月試験の場合)。

ニューヨーク州の場合、司法試験は年2回、7月と2月に行われるが、上記の7月の試験の合格率の方が圧倒的に高い。これも、受験する人の質の問題だと思う。2月に受験する人の多くは、昼間働きながら夜間にロースクールに通って12月に卒業した人か、前年の7月の試験に落ちた人である。つまり、未だに昼間働いていて勉強に時間を費やすのが難しい人か、英語が第2外国語のLL.M.卒業生をメインとする不合格経験者である。7月と同じような試験を実施しても絶対評価をすれば合格率が4050パーセントと低くなるのは当然というべきだろう。

合格率というのは実にトリッキーなもので、受験者の質に大きく左右される。合格率が低いからと言って試験が難しいわけではないことを念頭に置かなければならない。

逆に合格率が高いからと言って試験が易しいわけではない。例えば、日本の法科大学院が設立される前の司法試験合格者が500700人だった頃、司法修習所で行われた2回試験(司法修習所を卒業して法曹資格を得るための最終試験)の合格率はほぼ100パーセントに近かった。しかし、決して試験が易しかったわけではなかった。

日本の司法試験の合格率について色々言う人はいるが、受験生の質によってかなり左右されることを念頭においておく必要があるだろう。

 

2013年7月25日木曜日

沼の底から這い上がれない現実


リーマンショックの直後にアメリカのロースクールを卒業した世代は人生の出だしで躓き、そこから這い上がろうとしてもなかなか這い上がれない現実にぶち当たっているようだ。

20092010年はコンスタントに新卒弁護士を採用してきた大手事務所であっても新卒の採用を行わなかった事務所は多い。そこで、特に2009年、2010年にロースクールを卒業したJD取得者たちは、アソシエイト弁護士として法律事務所の仕事に就くことができず、短期のバイトのような仕事やパートで法律に少し関連する仕事に就いたりした者が多かった。景気が少しずつよくなり、大手事務所は以前のように新卒を採用するようになっているが、大手事務所が新卒として雇うのは、現時点での新卒であり、2009年、2010年に卒業したけれども就職ができなかった人たちではない。短期やパートの仕事では、履歴書に書けるような経歴はないと言っても過言ではない。つまり、かれらは新卒ではない未経験者と扱われる。2,3年の経験弁護士の就職先はあるが、短期の仕事を転々とした未経験弁護士は法律事務所の面接にすらこぎつけられないだろう。インハウスのポジションもないだろう。インハウスになるには、一般的に少なくとも2,3年の中大手事務所での勤務経験が要求されるからだ。
こうなってしまったら、弁護士の資格とは全く関係ないフルタイムの仕事を探すのが現実的なのかもしれない。

この失われた2年間にロースクールを卒業して当時必死に就職先を探していた人に最近会った。卒業から今まで短期の仕事を転々としているようであったが、もう3年以上経ってしまったことにあせりを感じているようだった。ロースクールを卒業するのに幾らつぎ込んだのだろう。一般的には1000万円くらいかかるのが普通であるが、借金はどのくらい残っているのだろうか。

アメリカには同じような境遇のJuris Doctor (法務博士)たちが多くいるのだろう。しかし、彼らの話を聞く機会はあまりない。