2014年4月30日水曜日

新人で社内弁護士?

日本では、社内弁護士が増えてきているというニュースを聞くが、よく聞いてみると、多くの会社が、弁護士としての経験が全くない新人弁護士を社内弁護士として雇っているというから驚きである。

アメリカでも社内弁護士の求人広告を見ることもあるが、大手事務所で最低でも3年以上の弁護士経験が必須と記載されていることが多い。マネジャーレベルの社内弁護士の求人であれば、10年以上の経験が要求される。その代わり、企業は、一般の社員とは異なる社内弁護士としての高い給料を支払うのが通常である。

弁護士資格を持っていても、通常の社員として働く人もいないわけではない。ただ、その場合は、社内弁護士というカテゴリーには当てはまらない。


それと比較して弁護士としての経験が全くない新人を社内弁護士として多く採用しているらしい日本の企業は、何の目的で社内弁護士を雇っているのだろうか。

大手事務所で働いた経験のない弁護士を社内弁護士として雇っても、大手事務所がどのように企業にチャージをするのか、分からない。自分で自分の時間をつけた経験のある弁護士は、不必要なチャージかどうかについても経験上分かるし、どのように弁護士を使えばチャージ時間が少なくなるかも分かる。

社外の弁護士にすべて外注せず一定レベルの法律問題は社内の弁護士に処理させて経費を削減しようという方針をもつ大手企業は増えているが、社内の弁護士が新人では経費を削減するだけでなく、質まで落としてしまう危険がある。

また、新人弁護士は未経験のために弁護士の能力の良し悪しの判断や外部弁護士の仕事を十分に監視できないのではないか。アメリカの社内弁護士は大手事務所での弁護士経験が長い人も多く、色々なことをよく知っているので、日本のクライアントと違って鋭い批判が返ってくることも多いが、法律事務所での経験のない企業内弁護士にそのような監視能力があるのだろうか。

他の企業との交渉の際に社内弁護士を担当させた場合、経験はないのに下手に弁護士という肩書きがあるので、間違った方向に会社を導いてしまう虞はないのか。




新人弁護士を社内弁護士として雇う日本企業を見ていると、新卒にこだわる日本の文化なのか、同期の社員との給料に格差をつけられないという企業文化のせいなのか。首を傾げたくなる。

アメリカと同じようなロースクール制度を導入してみても、同じにはならない例の一つなのだろう。