2015年9月21日月曜日

下位の法科大学院は、法科大学院制度に反対した方が大学の利益になるのでは?

今回はアメリカとは関係ないが、一言述べておきたい。


法科大学院制度が発足した時に、多くの大学が法科大学院を設置することに躍起になっていた。法科大学院という制度ができたのに、自分の大学に法科大学院がないと、大学の法学部の意味がなくなり、法学部の意味がなくなると、法学部に人が集まらなくなり、総合大学と言えなくなると心配したのだろう。

現在、下記の文部省の類型と分類によると法科大学院の実に半分以上の27大学が下二つのレベルに分類されている。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2014/09/24/1352164_10.pdf

早い話、文部省としておすすめできない法科大学院とのレッテルと張られた大学が半分以上もあると言ってよいであろう。このようなレッテルを張られた法科大学院を持つ大学は、そのことで、他の学部までもが、足を引っ張られて、大学全体としての評価が下がる可能性がある。
つまり、現在、かなり高い偏差値の学部もあるのに、法科大学院に対して国が張ったレッテルによって、それらの学部の評価も下がる可能性がありうるのではないか。

ビジネス感覚のある大学であれば、法科大学院に金をかけて文部省の評価をあげる努力をするより、法科大学院を閉鎖して他の学部を少ないお金で充実させる方がよっぽど見返りがあると考えるであろう。

しかし、最初の話にもどるが、法科大学院制度があるにもかかわらず、自分の大学に法科大学院がないと言うことになると、法学部の人気が下がり、総合大学と胸を張って言えなくなる危険がある。明治時代に法律学校として成立した大学など、その看板学部である法学部を維持するためにも法科大学院制度が存続し続ける限り法科大学院を閉じるわけにはいかないだろう。
そこで、他の学部の評価までをも下げかねない法科大学院を維持し続け、その法科大学院の評価を上げるために、効率が悪いにも関わらず補助金が減らされてもお金をつぎ込まなければならない。

それだったらいっそのこと、法科大学院という制度自体になくなってもらった方が、大学全体の経営という観点から見た場合に、よっぽどありがたいのではないだろうか。


私がそのような大学の大学関係者だったら、法科大学院制度自体を廃止するように働きかけるだろう。
その代りに、法学部に外国のロースクールに留学したいと思っている人たちのためのカリキュラムを導入した特別学科を作り、今の御時世、日本で弁護士資格を取っても意味がないので、海外で法律を学べる基礎を作れるような科目とノウハウを学べる特別な学科であると言って人を集めるだろう。

現状では、下位27校の法科大学院を経営する大学は、法科大学院制度自体を廃止するように働きかけた方が大学全体としてみれば利益が大きいのではないかと思うのは私だけだろうか。



2015年9月5日土曜日

日本の弁護士の業務拡大の必須条件は

日本で、弁護士の業務拡大を叫ぶ声が多い。ただ、今のままの制度では、弁護士の業務が拡大するとは思えない。弁護士登録抹消者を増やすだけである。

弁護士の業務拡大に必要なのは、二つ、①弁護士会費を年間5万円程度に下げることと、②海外を業務の本拠地とする弁護士登録を認めることではないだろうか。


まず、①についてであるが、現在、地域によって金額の違いはあるが、弁護士会費は年間60万円から100万円程度である。10年間支払い続ければ600万円から1000万円である。個人で負担するにはあまりにも額が多い。会社が5人の弁護士を雇って、弁護士会費を会社で負担した場合、年間300万円から500万円を負担することになるが、こうなると、人を一人雇うのに匹敵する負担になる。

こうなってくると、本当に弁護士登録をしなければ仕事ができない業務をやる弁護士以外は、弁護士登録を続けるのか、弁護士登録を抹消するかという選択を迫られることになる。
拡大された弁護士業務というのは、本来なら弁護士登録をしなくてもできる仕事がかなり含まれるはずである。弁護士業務を拡大するためには、弁護士会費を下げることで、弁護士登録を抹消するかという悩みを解消する必要がある。弁護士会費を下げることは、中規模の企業が弁護士を雇いやすくするためにも重要である。大企業でも、法務部には弁護士資格を持っている人しか雇わないといい始める会社が増えてくるかもしれない。


次に②についてであるが、これだけグローバル化が進んでいるなか、日本の弁護士会は、弁護士登録のために日本の住所を使わなければならないとは、驚きである。同じく日本の強制加入団体である弁理士会は、海外の住所で登録することを許しているようだ。弁護士会には、日弁連と各地域の単位会があって、その単位会によって弁護士会費が決まってくる。日本のどこに住所があるかでどの単位会に強制加入しなければならないかが決まるので、弁理士会とは違うのだと言うのかもしれない。しかし、海外にいる弁護士は、日弁連にだけ加入すればよいなど制度を変える方法を模索できないのだろうか。さもなければ、日本の弁護士登録が仕事上必須でなければ、弁護士会費の高さとあいまって、登録を抹消するだろう。実際そうやって登録を抹消した弁護士を何人か知っている。弁護士業務拡大を叫ぶ弁護士会は、弁護士がグローバルに働くことを掲げてることが多いが、日本の弁護士会の制度は弁護士がグローバルに働けないような制度になっているのである。自己矛盾である。


結局、弁護士業務拡大を主張している弁護士会は、弁護士会自体が弁護士業務拡大の障害になっていることを気づいているのだろうか。



2015年9月1日火曜日

マチ弁から足を洗った理由

私が司法試験に合格したのは、修習が2年間だったころである。司法試験に合格すれば一生安泰と言われ、就職活動イコール法律事務所に食事をご馳走になることであった。また、司法試験に合格したと言えば、周りの人が「すごいですね。」と2歩、3歩下がって驚いてくれた時代である。当時はこれで食うに困ることはないだろうと思っていた。

しかし、2000年に、驚く出来事が起こった。ロースクールと3000人合格を推進するという決議をするための、東京の弁護士会館のクレオの総会の様子は、今でも鮮明に覚えている。普段であれば、委任状を出すだけの地方の弁護士たちが、この時ばかりは東京に集まった。クレオの会場に入りきらない弁護士が会場の外に溢れだし、会館の1階には特別のテレビが設置され、会場の様子が映し出された。日弁連会長を推した派閥が、決議に賛成すると決めた以上、弁護士会派閥支持者によってこの決議が可決されるのは皆承知している。しかし、「お願いだから一言いわせてくれ」と、地方の弁護士たちが地方の弁護士会を代表して、次々と発言していた。予定時間はもうとっくに過ぎている。私は30分程度しか会場にいなかったが、その時の地方からやってきた弁護士の様子は今でも覚えている。地方からやってきた弁護士は皆危機感があった。弁護士会派閥の執行部は、当日まで派閥会員に電話をかけて可決の票集めに必死になっていた。

この当時、既に弁護士になっていた者であれば、ロースクールができて、1年に3000人も合格すればとんでもないことが起きることは分かっていたはずである。しかし、一部には、まだまだ大丈夫という楽観論もあった。修習期間が2年から1年半になった時、52期は3月に修習期間が終わり、53期は同じ年の10月頃に修習期間が終わることになることで、1年間に1500人の修習修了者が発生して就職にあぶれるものが出るのではないかとささやかれていたが、就職にあぶれて困っている人がいるという話を聞くことはなかったからである。

もし、ロースクールと3000人合格計画が実行されたら大変なことになると直感した。
ただ、確信があったのは、ロースクールが始まってから5年は、まだ現状が維持されるだろうということだ。しかし、この5年間は、猶予期間に過ぎない。この5年が過ぎた後に徐々にやってくる、弁護士苦難の時代に備えて、今から何らかの対策をたてなければならない。さもなければ、食っていくのは難しくなるだろう。この5年間をどのように過ごすかでその後の一生が決まると。

そこで、マチ弁から足を洗うことを決意し、マチ弁以外で食べていく基礎を築くための計画を実行した。気が付くと、日本の弁護士資格を使って仕事をしていないことに気づいた。
いつか、皆が司法改革の誤りに気づいて、対策をたてる日が来たら、日本の弁護士に戻ろうかと思ったが、最近ではそのような日が来ることはないと確信するようになった。

驚いたことに、当時東京にいるほとんどのマチ弁から危機感のようなものを全くと言ってよいほど感じられなかったことだ。マチ弁たちは、弁護士苦難の時代が来るのを首を洗って待っているのだろうかと思うほどであった。

ロースクールと3000人決議の票集めのために、当日まで派閥会員に電話をかけて投票を呼び掛けていた弁護士は今頃になってあの時のことを振り返ったりしているのだろうか。