2017年7月24日月曜日

法科大学院は加速させただけ

法科大学院は、司法改革の失敗としてやり玉に挙げられるが、結局、法科大学院がなかったとしても、マチ弁の状況は、今と同じようなことになったのではないかと思う。ただ、これほど急ではなく、少しずつ少しずつと。

少子高齢化に対する対策がほとんどないなか、企業は、着実に外を向いている。日本企業が海外で得る利益の比率が増えている。去年、アジアの国の中で、アメリカの企業を買収した総額は、中国を抜いて日本が1番であったと、あるアメリカの法律専門ウエブサイトが報じていた。

これはつまり、日本国内に関するものだけを扱う弁護士の需要が下がっていくことを意味しているのではないか。

また、日本の人口に占めるリタイア層が増えてくるのもマチ弁を直撃する。リタイアした高齢者がマチ弁に弁護士費用を支払えないだろう。
また、昔と比較して生活が苦しくなっている若者がマチ弁払うお金はないだろう。

また、インターネットの普及により、遅かれ早かれ、弁護士ドットコム等の、マチ弁の弁護士報酬を低下させ、マチ弁を疲弊させるウエブサイトが発達するのは避けられなかったはずである。

また、法科大学院がなかったとしても、年間の合格者を1500人程度に増やすことはできたのであるから、今ほど急激ではないとしても、裁判官や検察官の人数が増えなければ、廃業する人と比較すれば弁護士の数が着実に毎年1000人くらいは増え続けたわけである。

たとえ法科大学院ができなかったとしても、マチ弁の仕事が減り、人数が増えるというのは変わらないのだから、マチ弁が仕事にあぶれ、収入が減るという事態は長期的な目で見れば避けられなかっただろう。


ただ、法科大学院がなければ一つだけ違ったのは、弁護士になるまでにかかる費用を大幅に圧縮することが可能で、弁護士になるのが最終目的というわけではない優秀な人がとりあえず司法試験を受けてみるかと受験してくれたかもしれないという点だ。実際、法科大学院ができる以前は、国家一種を受験した人が、結構、ついでに司法試験を受験しており、その多くが択一試験に合格し、なかには最終合格している人もいるのである。
このようなかたちで司法試験に合格する人がいれば、他の分野で少し経験を積んだ後に、考えを変えて弁護士になるかもしれないし、多様な人材が法曹界に入るきっかけにもなったかもしれない。