2014年3月28日金曜日

ホラー映画より怖いロースクールの現実

Abave the Lawというアメリカ法曹に関する、わりとよく読まれていて信頼もあるブログがあるが、そこに、ホラー映画より怖いと思われるアメリカのロースクールの現実に関する統計が出ていた。

http://abovethelaw.com/2014/03/the-law-schools-with-the-most-heavily-indebted-graduates/

ロースクールに行くために卒業生が負った借金の平均をロースクールごとにランキングしているのである。
1ドル100円で計算しても1500万円を超えているロースクールがほとんどである。


ランキングのもととなっている統計はこちらのようだ。

http://grad-schools.usnews.rankingsandreviews.com/best-graduate-schools/top-law-schools/grad-debt-rankings

さらに、ロースクールごとに、卒業生の何パーセントが借金しているのかの統計が出ている。75パーセントから90パーセントの卒業生が借金している。


恐ろしいことに、この統計には、ロースクールに入る前に卒業した大学のための借金は含まれていないそうだ。


この記事の良いところは、就職率の統計もあわせて検討しているところである。

リストを見てもらえば分かるが、非常に低い。驚くべき低さである。有名校はわりと高い率になっているが、有名とは言えないロースクールは50パーセントをきっている。

面白い表現は「As we’ve noted previously, going to a low-ranked law school is like “playing Russian Roulette with your financial future.” 」である。
ランキングの低いロースクールに行くことをロシアンルーレットにたとえている。


何のためにこれほどの借金をしてロースクールを卒業したのか、自問自答している卒業生は星の数ほどいるのであろう。
知らないというのは、本当に怖いことである。

2014年3月22日土曜日

アメリカの弁護士費用を抑えるにはどうすればよいのか?

日本企業が使うようなアメリカの法律事務所の弁護士はアワリーチャージで弁護士報酬を決定する。しかし、クライアントの立場からすれば、本当にそれだけの時間弁護士が働いたか確認するすべはない。

難しい法律問題が絡んでおり、時間がかかる事件もあるし、時間がかかるように見えるけれども、実はあまり時間をかけずに出来ることもある。

単に弁護士に、報酬が高すぎると文句をつけるだけだと、あのクライアントは金払いが悪い良くないクライアントと認識され、弁護士が事件処理を後回しにしたり、真剣に取り組まなくなったりする可能性もある。


では、クライアントは不当に高額なチャージをしてくる法律事務所に何も言えないのだろうか。


そんなことはないだろう。


クライアントに渡される唯一の手がかりは、誰が何日に何時間何をしたかという明細である。

クライアントとして、まず、出来ることはこの明細の書き方について指示することである。例えば、アソシエイトが3月22日に7時間働いたと付けたとする。その明細が会議の出席と、判例のリサーチ、ドキュメントレビューとなっている。こうなっていると、7時間が妥当なのか不当なのか分からない。そこで、まずは、項目をまとめて時間をつけないように指示する。会議、判例のリサーチ、ドキュメントレビュー、それぞれ別々に時間をつけるように指示する。さらには、会議は何の会議だったのか、出席者が誰だったのか、判例のリサーチはどのような法律問題に対する判例のリサーチなのか等、詳細を記載するように要求する。

何故、このような要求をすることが必要なのか。

このような要求により、同じ会議に出席した同じ事務所の弁護士がどのように記載しているのか明細を比較して、矛盾や不一致を見つけることができる。
また、何のための会議か書かせることにより、当時そのような会議を開く必要があったのかどうかを確認することが出来る。
判例リサーチの内容についても、具体的に書かせることによって、こんなことのリサーチのためにこんなに時間を使うのかというのが分かる。

このように詳細な記載を要求することによって、弁護士の立場から見て、不当に多くの時間をつけ難くなる。将来の割り増し請求を抑止する効果もある。

また、弁護士に請求書の明細について文句をつける場合も、まずは質問をするという形がよいだろう。

ケチではないし、良いクライアントであるけれども、細かいところまで見ているクライアントなので、時間をつける時に注意が必要であると思わせるのが必要である。ビリングパートナーに質問すれば、それが、アソシエイトレベルにも周知されて、アソシエイトもそのクライアントには安易に時間を付けられないと認識する。
文句をつける場合も、ビリングパートナーについてではなく、まず、アソシエイトレベルの時間の付け方に文句を言うのがよいだろう。「ビリングパートナーはとてもよく働いて満足なのだが、」と褒めておきながら、アソシエイト等入れ替えがきくような人の行為に文句を言うと、アソシエイトの暴走を止めてくれるが、ビリングパートナー自身も駄目だと責めてしまうと、クライアントがアメリカでも有名でない限り、クライアントの方が悪いと言い出しかねないからである。

時間のノルマをこなすために、アソシエイトは、文句を言ってこないクライアントに水増しして時間を付けがちである。明細を確かめるのは手間がかかるかもしれないが、月に支払っている弁護士費用が1割から2割安くなるのであれば、それだけの時間をかけても損はしないだろう。


ただ、小さい仕事しかない小さいクライアントで、1回の仕事で終わってリピーターになることはないクライアントと認識されると、上記に記載したような対策も、どの程度役に立つか疑問であるが。。。

2014年3月8日土曜日

大手事務所は例外事例

日本の人は、アメリカの大手事務所の弁護士を基準に、「アメリカの弁護士は。。。」「日本の弁護士は」と比較する人が多いが、これはナンセンスである。

大手四大事務所の弁護士だけが弁護士であるかのように日本の弁護士について語っているようなものである。

アメリカの弁護士の方が日本の弁護士より優秀だと言っていた人に会ったが、よく聞いてみると、比較しているアメリカの弁護士はすべて超大手事務所(1000人規模で弁護士がいる事務所)にいる弁護士で、日本の弁護士は、極普通の5人から10人の弁護士がいるような事務所の弁護士を指して話しをしていた。

大手事務所に採用されるためには有名なロースクールで優秀な成績をおさめる必要がある。日本の四大大手事務所レベルのアメリカ事務所に採用されるのは、アメリカの新人弁護士のせいぜい上位5パーセントくらいに過ぎない。

日本企業がアメリカの弁護士に依頼するときは、特殊分野でない限り、大手事務所の弁護士を雇うのが一般的なので、弁護士全体の割合からすれば極わずかの大手事務所の弁護士がアメリカの弁護士のすべての様な論調で、「アメリカの弁護士とは」を語っている人が多い。

これは本当にナンセンスだと思うが、これこそが、アメリカのロースクール制度を模倣した司法改革の原点なのではないか。アメリカの大手事務所だけを見てきた日本人が、就職難にあえぎ、資格はあるけれども弁護士として十分活躍できていない一般のロースクール卒業生と接する機会を持たないまま、アメリカのロースクールを模倣すれば、アメリカのようなすばらしい未来があるとして司法改革が進められてきたように見えるのは私だけであろうか。