2016年11月7日月曜日

当たり前のことであるが

最近、ビジネスに関心を持っており、ちょっと年配のアメリカ人と話をしている際に、何気なく「ビジネススクールに行ってみたいなあ」とつぶやいた。すると、下記のような忠告を受けてしまった。

「ビジネススクールに行くかどうかを決定するには、ビジネススクールの学費がいくらになるかしか考えていないかもしれないけれども、ビジネススクールに行っている間仕事をしないのであれば、その間に得られるはずの収入をプラスしなければならない。その合計額を、ビジネススクールに行ったことで、現在よりもいくら多く年収を得られる職に就けるかどうかを予想し、ビジネススクールに行ったことで失った収入プラス学費を何年間で回収できるかを計算するんだよ。それをもとに、ビジネススクールに行くかどうかを決定しなければならない。そうすると、かなりの場合、ビジネススクールに行くこと、特に、有名な学費の高いビジネスに行っても元が取れないんだよ。」

確かにそう考えると、仕事を辞めて、自分の金でビジネススクールに行くなんてとんでもない話だと思った。どう考えても元が取れるとは思えない。

それと同時にいくつかの考えが頭を巡った。

日本の大手企業、特に商社などは、若手の優秀社員をビジネススクールや、ロースクールに会社のお金で行かせて、さらにその間、給料まで出すということをしているが、その場合、社員にとってみれば学位が取れて、知識が増えて、履歴書の見栄えが良くなるが、失うものは何もないわけだ。学位を取り終わった後に就職活動をする必要もない。アメリカに留学するなら、この方法が最善である。今留学を考えている人に対しては、会社が金を出してくれないなら、留学するのは、余程考えてからにすべきだと忠告したい。

また、日本の法科大学院に行くのは、どんなに頭をひねっても経済的な理由が見つからないと思った。特に、社会人が仕事を辞めて法科大学院に行くのは、自殺的である。法科大学院の場合、学費自体はアメリカのロースクールと比較すると安いが、収入が得られない期間が長すぎる。2年の法科大学院に行っても、修習が終わるまで収入が得られないとすると、4年近く得られるはずの収入が得られないのである。
また、転職が容易でなく、転職することで給料が下がる可能性が高い日本で、一旦会社を辞めることはリスクが高い。
特に、日本の社内弁護士の給料は一般の社員とほとんど変わらないのであるから、法科大学院を卒業して弁護士資格を得たからといって以前よりも多額の収入を得られることがない。つまり、いくら働いても働いても、学費と得られたはずの給料を取り戻すことができないのである。
結局失っただけになり、老後に、あの時に法科大学院にいっていなければ、もっと生活が楽だったかもしれないと後悔することになるのだろう。





2016年6月27日月曜日

こんなことになるとは思わなかった

英国で、EUを離脱することに賛成票を投じた人たちの中には、あまりの経済的な影響の大きさに驚き、もう一度投票をさせてほしいと言っている人もかなりいるようである。
経済的に大変なことになると、投票前に専門家があれほど警告していたのにも関わらず、そんなことはないと言い放つ政治家を信用して離脱に投票した人たちである。

この英国の出来事から、あの2000年の弁護士会のロースクール賛成、合格者3000人賛成決議に賛成票を投じた弁護士たちのことが思い出されるのは、私だけであろうか。

離脱に賛成票を投じた英国人と、ロースクールと3000人合格に賛成票を投じた弁護士との違いは、投票後に後悔していると本音を語るか、意地でも決議は正しかったと言い切るかである。

あの2000年決議の時、弁護士が一緒になって、ロースクール反対を訴えたらどうなっていたかと思うことがある。
ロースクールの設立は止められなかったかもしれないが、政策失敗が明らかになった直後から、弁護士会主導で、制度改革に向けて活動できたかもしれない。

2016年6月12日日曜日

学閥 その2

今の日本の法科大学院制度は、学閥を助長する要素があると思う。

定員割れが叫ばれているなか、入学試験を受けてくれる人をどれだけ確保できるかは、法科大学院としては死活問題である。
法科大学院の案内パンフレットに魅力的なことを書きたいと思う。
大学院を卒業した者のその後の進路が魅力的であることは応募者を増やすためには必須である。

そうするとどうなるだろうか。
法科大学院関係者は同じ大学院を卒業して弁護士になった人、同じ大学を卒業して企業の上の方で活躍している人に対して、うちの法科大学院出身者を雇ってほしいとお願いすることが考えられる。
「お願いします。うちの法科大学院の評価が高くなれば、あなたにとっても得になります。」


学閥はこのようにして助長されるのではないか。

2016年6月10日金曜日

学閥

私が弁護士になったもう20年くらい前の時代、友人に、弁護士の世界に学閥のようなものがあるのか聞かれたことがある。
確かに、歴史的に弁護士を多く輩出してきた大学には同窓生の法曹の集まりのような会があったが、弁護士会の中に俗にいう学閥のようなものは、私の記憶する限りなかった。

当時宝くじに当たる確率のようなあの低い合格率の司法試験に合格したこと、同じような2年間の修習を経たというだけで一体感があった。

どこかで弁護士に会うと、まずは
「先生は何期でいらっしゃいますか」と修習の期を聞くのが一般的で、次の会話は
「〇〇期でいらっしゃるのですか。それでは、〇〇先生をご存知ではないですか。」
「ああ、〇〇先生ですね。良く存じ上げております。この前も、、、」
と話が続くのが一般であった。

修習の時は、誰がどの大学出身なのか、皆知っているが、大学によって修習生が優秀かどうかの格付けが付くようなことはなかった。大学としてそれほど良い大学とされていない大学出身者であっても、大学在学中に司法試験に合格した人がいれば、有名大学を卒業したけれども司法試験合格に時間がかかった修習生は、尊敬の眼差しで、その短期合格者を見ていた。

法科大学院ができて、司法試験合格者が増えるということが決まった時、今後は学閥が幅を利かせるだろうと思った。
特に、司法試験に合格したというだけでは優秀と言えない時代になれば、どの大学、どの法科大学院を卒業しているかは、重大な判断基準である。優秀な大学や法科大学院を卒業した弁護士は、あまり良いとされていない大学や法科大学院を卒業した弁護士を見下すようになるだろうと考えた。
昔のような宝くじに当たるような確率の司法試験に合格して、2年間の充実した修習を経験したことによって一体感があった法曹界が変わるだろうと。

実際、今はどうなっているのだろうか。



2016年5月22日日曜日

人工知能が弁護士として事務所に就職する日

アメリカでは、既に、人工知能が弁護士法律事務所に就職する日が来たようだ。

アメリカの法律関係の有名なブログには、大手事務所が人工知能弁護士を雇用したと記載されている。破産法に関するプラクティスをするという専門分野まで決まっているらしい。

http://abovethelaw.com/2016/05/bakerhostetler-hires-a-i-lawyer-ushers-in-the-legal-apocalypse/


ROSSという人工知能弁護士で、IBMのワトソンという人工知能をもとにしているようだ。
http://www.rossintelligence.com/

最初のページにはSuper intelligent attorneyと記載されている。

アメリカでは、リーガルリサーチで何時間もアソシエイトやパラリーガルが時間をつけてクライアントに多額の弁護士費用を請求しているが、この人工知能を使ってリーガルリサーチをした場合、法律事務所はどの程度の費用を請求するつもりなんだろうか。
ブログによると若手弁護士がリーガルリサーチをして判例を分析してリーガルメモを作成する時間として15時間かかるのをROSSはあっという間にこなすと予測されている。


現在は、この人工知能が非常に高いことが予想されるので、人工知能を使ったサーチでも多額の費用を請求する根拠もあるだろうが、何年か経って、人工知能を採用する費用が安くなったら、どうなるのだろうか。企業が一人の社内弁護士を雇う代わりに人工知能を採用するという程度の値段になれば、企業は、人工知能を雇うかもしれない。そうすれば、法律事務所は人員削減に踏み切らなければならないだろう。

弁護士の将来はますます不透明になっている。弁護士だけではない、他にもリサーチを商売にしている業種は多数あり、同じような人工知能が既に開発されている、または将来開発されるであろう。


これからの若者は大変である。特に、年金のもらえる年齢が70歳になるのであれば、50年後を見据えて職業を選択しなければならない。将来を予想するのは非常に難しい。


間違っても、弁護士、特に日本の弁護士を選択するのは絶対にやめるべきだろう。初期費用がかかり過ぎるにもかかわらず、将来が全く見えない。また、初期費用が高いと、途中で状況が変わったときや、間違った選択だったと気づいたときに、他の選択肢を考えてみようという柔軟性が極端になくなる。