2016年2月22日月曜日

社労士も大打撃では?

法曹とは若干ずれるが、もしアメリカに社労士という資格があったら、今頃もうそれは過去のものになっていただろうと思うサービスがアメリカの会社では一般的に利用されている。

そのようなサービスを行う会社のウエブサイトを見てみると、同じ会社が日本にも進出しているようなので、御紹介しようと思う。

アメリカでは、オンラインで、タイムカードのチェックをし、それをもとに、残業代を含む給料を計算し、管理者が2週間ごとに働いた時間を確認した後、コンピューターによって各従業員の給与計算をし、控除する税金を計算し、計算した額をもとに銀行口座から税金を支払い、各従業員の銀行口座に給与を振り込み、給与明細をサービスを受ける会社に郵送するというサービスを利用している会社が一般的である。
年末に各従業員が税金申告をするための書類も作って、郵送してくる。
タイムカードをパンチできるコンピュータのマックアドレスを登録して、他のコンピュータからパンチインできないようにすることもできる。
サービスを受けると、従業員一人について、いくらという計算であるが、社内で専門の人を雇ったり、日本の社労士のような人のサービスを受けることを考えたら、安いものである。

各州によって、法律と税金が異なるアメリカであるが、簡単なことであれば、質問もできる。
こういうサービスを利用するのは小規模な企業だけかと思うかもしれないが、従業員が何百人単位でいるような会社もこのサービスを利用している。

給料や税金の支払い元の口座を持つ銀行も、ビジネスの内情を把握できるという利益もあいまってか、同じようなサービスに乗り出すところも出てきているようだ。

このようなサービスを提供する会社としてADPと、Paychexという会社はよく聞くが、ADPは、日本向けのサービスも始めているらしい。

http://japanese.adp.com/solutions/employer-services/streamline.aspx

このようなサービスを受けることが日本の中小企業で一般化したら、社労士はひとたまりもないのではないかと思う。

2016年1月1日金曜日

Happy New Year

日本では、Happy new yearは「あけましておめでとう」の意味だと習った。間違っているわけではないが、Happy new yearには、日本の学校では教えていないもう一つの意味がある。「良いお年をお迎えください」である。
クリスマスを過ぎた後、年明けまで会わないと思われる人と別れるとき、皆が必ず言うのは、「Happy new year!」である。アメリカでは、12月31日は休みではないが、皆早く帰るのが一般である。帰る際に皆口々に言うのは「Happy new year!」である。

12月30日だとこんな会話が交わされる。
「Are you coming to the office tomorrow?」
「 No. Are you?」
「Probably. 」「Happy new year!」

明らかに、人々は「Happy new year」を「良いお年をお迎えください」という意味で使っている。

日本だと、1月中は、その年初めて会った人に対して「あけましておめでとうございます」というが、Happy new yearは、クリスマスが過ぎたらMerry Christmasと言わないのと同じように、正月が過ぎるとすぐ使われなくなる。


たかがHappy new yearでも、日本とアメリカで使い方が全く違うように、国が違えば日本にいるだけでは分からないような違いがある。なのに日本ではなんでも海外のもの、特にアメリカの制度などを何も考えずに日本で採用しようとする傾向にある。日本とアメリカの違いを何も考えないままに。ロースクールもしかりである。

2015年12月19日土曜日

本当の自由化とは?

法曹とは関係ないが、日本人が誤解しやすいことを話したいと思う。

規制緩和、自由化と言う言葉に弱い日本人であるが、本当の意味の規制緩和、自由化の意味を知ったら、明らかに反対するであろう。規制を緩和又は廃止して自由化を認めると言うことは、個々のビジネスが、自己の利益を最大にすることを許すことである。利益を最大にしようとすると、下記のようなことが起こる。


日本人であっても、飛行機のチケットを購入する場合に、出発日と帰国日によってチケットの値段が違うことや、旅館やホテルの一泊の料金が、土曜日の宿泊料金が、月曜日の宿泊料金より若干高くなると言うことには、ある程度納得しているであろう。

しかし、アメリカの長距離列車やホテルのような価格変動が規制緩和の行き着く先だと知ったら、規制緩和には反対するであろう。代表的なホリデーやコンファレンスなどのイベントの予定や、購入する時期、空きがどれくらいかである等、様々な情報をアルゴリズムを使ってコンピュータが綿密に計算して、一番儲かる価格をわりだすのである。同じ行先の同じ電車の同じレベルのチケットを、私は70ドルで購入したのに、他の人は、混んでいる時間帯に利用するというだけで200ドル以上で購入していたこともある。直前に購入した人は、1か月以上前に購入した私より、3倍の値段を支払っていたこともある。大きなコンファレンスがある場合、同じホテルの宿泊料が3倍以上になるのも珍しくない。


日本人の常識から考えられない事例は、ハイウェイである。ハイウェイに無料のラインとエクスプレスラインがあり、途中から分かれている。エクスプレスラインの料金は変動制となっていると言うのはアメリカでは珍しくない。変動制の場合、車に装着した、機械によって料金がチャージされる仕組みになっている。現時点での料金が大きく掲示板に記載される。ハイウェイの無料のラインが朝晩の混雑する時間帯は、有料ラインは20ドル~30ドルすることもある。ハイウェイの無料ラインがあまり混雑していない時間は、5ドルくらいと安くなる。これによって、ラッシュアワーは30ドル払ってもどうしても早く目的地に行きたい人だけが、エクスプレスラインを利用することになる。すると、エクスプレスラインは必ず、無料のラインより混雑していないという状態を作ることができ、その分、混雑していない時間帯の6倍の費用をとることによって、収益を得ることができる。
これも、すべて、ハイウェイの各所に備え付けられたモニターとアルゴリズムを使ったコンピュータによって、達成されている。


上記に記載したのは、ほんの一部の例に過ぎない。規制を緩和または廃止して自由化に舵をとると、日本人の常識から考えて許されないと思うようなことが起こると言うことをしっかりと認識しなければならない。

2015年11月19日木曜日

新人アソシエイト弁護士に一言

頭が良くて、成績優秀で、試験が得意で、有名大学や有名ロースクールを優秀な成績で卒業し、大手事務所に就職できたとしても、パートナーに使ってもらい易い弁護士にならなければ、最初の大きな挫折を味わうことになる。つまり、パートナーから仕事をもらえなくなり、事務所内で事実上失業し、結果的に事務所を辞めなければならなくなる。


最近、事務所内のパートナー弁護士から、オーバーフローしている仕事があったら、アソシエイトのトム(仮名)にAssignしてくれないかと頼まれた。

「ここだけの話だけれどもクライアントが少し仕事を減らしてきて、トムを十分に忙しくするだけの仕事がないんだよ。」と言われて、
「そう言われても、既にデビット(仮名)とボブ(仮名)に仕事をやってもらっていて、それで十分足りているから、トムにAssignする仕事はないなあ。でも、心に留めておいて何かあったらトムに回すから。」と答えた。

そんな会話をしていたが、心の中では、「いやあ、トムは使いづらいから使いたくないなあ。この仕事に〇〇時間以上かかる時は、事前に私の許可をとるようにというと、必ず、ぎりぎりいっぱいの時間をつけてくるし、以前間違いを指摘したら、最初の私の指示の方が悪かったから間違ったと、私を責めたこともあるし。能力はないわけではなんだけれども最近は使うのを極力避けているんだけどなあ。」と思っていた。


事務所のある部署で扱える仕事量のキャパと、実際の仕事量が、イコールになることは滅多にない。仕事量がキャパを超えているか、キャパが実際の仕事量を超えているかどちらかである。仕事量がキャパを超える場合、仕事が遅れ遅れになって、クライアントが逃げていくことがあるので、直ぐ人を雇う。キャパが仕事量を超えている場合、誰かを辞めさせなければならないが、誰を辞めさせるかという話になる。その際、仕事量が少ない弁護士が標的になる。だから、仕事を頼まれやすい弁護士になることが必要なのだ。

能力がないアソシエイトに仕事を頼みたくないのは当然だが、ある程度の能力があれば、人間的に仕事を頼みたいと思うアソシエイトについつい仕事を頼んでしまう。快くにっこりと、「もちろん喜んでやりますよ」と引き受け、仕事の期限を守って、クライアントの前ではパートナーをたてて、パートナーを差し置いてクライアントに直接連絡をとることはなく、パートナーの間違いを責めたてることもないアソシエイトに。

使ってもらい易いアソシエイトになることは、事務所で成功するための第一歩である。








2015年10月15日木曜日

日本人は自由競争の意味を誤解しているのでは?

日本人は、自由競争の意味を誤解しているのではないかと思う。

自由競争をさせればサービスが向上して利用者の特になると誤解している人は非常に多い。
しかし、自由競争をさせると、サービスが向上するとは限らないのである。
例えば、電車は時間通りに来なくなったり、ちょっとしたことで停電になる可能性を引き起こすのだ。

常に電車を1分たりとも遅れないように運航するには、お金がかかる。しかし、電車を1分たりとも遅れないように運航したからと言って、それによって、乗客の数が極端に増えることはない。つまり、収益が大幅に上がるわけではない。かけたお金に比例するだけの収益増加が見込めないということだ。例えば70~80パーセントの割合でほぼ時間通り程度に運航していれば、乗客の数は減らないとしよう。鉄道会社がビジネスを優先して利益を最高にしようと思ったら、70~80パーセントほぼ時間通りに電車を運行するのが、最も効率的でということになる。
アメリカを走っているアムトラックは、70パーセントほぼ時間通りであると胸を張って宣伝している。さらに、人が多く乗る時間帯の料金は高く、また、直前にチケットを購入すると非常に高い。好きにビジネスをさせるとこうなるのだろう。利用せざるを得ない利用者がどこまで金を払ってくれるかを見ながら料金を吊り上げ、利用者の足元を見た商売をしている。代替手段であるバスや飛行機の値段を見ながら、客が代替手段に乗り換えない最大限利益が上がる料金はいくらなのかを計算しているのである。自由競争によって利便性が良くなったとは言い難い。


また、電気に関してであるが、アメリカは日本と違ってちょっとした大雨などでも停電することがある。さらには、利用者が少ない地域は停電後の復旧に時間がかかることもある。
日本では、田舎の方まで、コンクリートの立派な頑丈そうな電信柱が立ち並んでいるが、アメリカでは、少し郊外に行くと木でできた細い弱そうな電信柱が立ち並んでいる地域も多い。すべて立派なコンクリの頑丈な電信柱にする費用は高いだろうから、ビジネス的に考えると、丈夫な電信柱を立てたことによる費用とそれによって上がる収益とを綿密に計算するという発想になるのだろう。例えば、すべてを立派なコンクリートで作った場合と、人口の多い都市部だけ丈夫な電柱を作り、人口が少ないエリアについては、簡易な電信柱を立てておいて、何か災害があった時に壊れた部分のみを復旧させる場合を比較し、後者の方がコストパフォーマンスが良いということになれば、すべて立派な電信柱にする必要はないというビジネス判断をくだすことになる。その代り、人口が少ないエリアに住む人は利便性が失われる。

結局、停電のリスクを、一部利用者に負わせることで、利益を最大限にするのである。


自由競争をされることで利用者の利便性が高くなるのは、様々な条件が重なった特別な場合の例外にすぎず、多くの場合は、自由競争をさせることでビジネス判断によって切り捨てられる利用者が必ず出てくるのである。


法曹界でも同じである。自由競争を促進したからと言って一般国民の利便性が高くなるわけではない。事務所が高いリーガルフィーを支払える企業に対するサービスを重視するのはビジネス的に考えれば、正しい判断になるからである。