アメリカの中規模から大手事務所の弁護士はアワリーチャージで報酬を請求するのが一般的である。そのリーガルサービスを提供するのに費やした時間×(かける)弁護士のアワリーレート=(イコール)報酬請求額である。
つまり、アワリーレートとは、その弁護士の1時間あたりの単価である。
弁護士が500人を超える大手事務所だと、新人弁護士のアワリーレートは350ドルくらいから始まる。アソシエイトのアワリーレートは事務所が勝手に決めるのが普通である。本人の意思や能力とは関係ないところで、定期的に一定割合のアワリーレートの値上げが行われる。例えば、2年目は375ドル3年目は400ドルというような感じである。
カウンセルやパートナーになると弁護士本人の意向やクライアントの需要等で、アワリーレートを変えることもある。
ただ、アメリカの弁護士は、自分のアワリーレートを下げることに抵抗がある。弁護士というだけでは優秀ということにならないアメリカでは、アワリーレートの高さは、弁護士としての能力を示す指標と思っている弁護士が多いからだ。1時間1000ドル(1ドル100円でも10万円)をチャージしても依頼してくるクライアントがいるというのは、それだけ弁護士としての能力が高いということになる。逆にアワリーレートが低いということは、アワリーレートを低くしなければ依頼してくるクライアントがいない、能力の低い弁護士ということになる。「あいつがこれだけのアワリーレートを請求しているのに、自分のアワリーレートがそれよりも低いということは、自分はあいつよりも能力の低い弁護士ということなのか。クライアントもそういう目で見るかもしれない」と思うわけである。
なので、アワリーレートのディスカウントをする場合でも、「あなたの会社は年間1億円近い報酬を支払ってくれる大切なクライアントさんなので、あなたにだけ特別私のアワリーレートをディスカウントしますよ」という理由のあるディスカウントはしても、規模の小さい企業の小さな事件に関してはディスカウントをしないのである。
規模の小さい企業から、あまりお金にならない仕事でディスカウントしてほしいと頼まれた場合、大手事務所は上手に依頼を断るだけだろう。
安売りしなくても商売が成り立つためには、弁護士に質のばらつきと、経験のばらつきがあることが前提となる。
日本でも弁護士というだけでは優秀ということにはならなくなってきた。アワリーレートの高さは弁護士の能力の指標であるという時代が来るかもしれない。