2015年7月25日土曜日

優秀だけれどもコネがない場合

優秀だけれどもコネがない人はアメリカの弁護士になって成功できるのかについて、一言述べておこう。

結論として、優秀であると言うだけでは、成功できない。コミュニケーション能力が高いことが必須条件である。さらに、運が良いことも必要である。


ここで言っているコミュニケーション能力が高いという意味を説明しよう。


コネのない優秀な人が大手事務所に就職するためには、ロースクール1年目で非常に良い成績を取得し、大手事務所のサマーアソシエイトとして働くことが必要になる。サマーアソシエイトとして働いている時は、皆に気に入られるようにすることが重要である。間違っても、こいつは雇いたくないと思われるようなことをしてはいけない。

その後、アソシエイトとしてサマーアソシエイトとして働いた事務所に就職できた場合、複数のパートナーに気に入られることが重要である。気に入られるためには、そのパートナーが使いやすいアソシエイトになることである。使いやすいアソシエイトになるためには、仕事の質さえよければよいと言うものではない。パートナーからメールが来たら、直ぐに返事をし、何か頼まれたら、「喜んでやります」と引き受け、期限よりも少し早い時期に仕事を終わらせることが重要である。

如何に優秀であっても、パートナーに「あんた頭が悪いんじゃないの。分かってるの?そこ間違っているよ。」というような雰囲気が見られる接し方をしたら、NGである。パートナーのプライドを傷つけない、パートナーを快適な気持ちにさせるような接し方で、間違いを指摘できることも重要である。

また、クライアントに気に入られることも重要であるが、間違っても、パートナーが、「こいつ俺のクライアントを盗むのでは」と不審に思うような付き合い方をしてはいけない。少なくともその事務所にいる間は、「このクライアントはあなたのクライアントだと言うことを分かっていて、盗むようなまねはしません」という無言のメッセージを発信し続けなければならない。

さらに、1人のパートナーだけに気に入られて他のパートナーに気に入られないのもNGである。アメリカのクライアントは、日本企業のように、弁護士事務所について忠実ではない。法務部の部長が変わった直後に、他の事務所に仕事を頼むことにしたからといなくなることもある。その際に、他のパートナーに気に入られていなかったら、自分に仕事をくれる人がいなくなってしまう。そうすれば、要求される時間をつけることができなくなり、自分は真っ先に首を切られてしまう。複数のパートナーから気に入られて、仕事をもらえることが必要である。

同僚のアソシエイトにも気に入られておくことも重要である。3年~5年くらい大手法律事務所で経験を積んだ弁護士が企業のインハウス弁護士として就職することは多く、インハウスになった元同僚弁護士に気に入られておけば、将来、その会社が元同僚を通じて自分のクライアントになってくれる可能性もある。

また、パートナーや同僚弁護士に気に入られることは、将来、自分のいる事務所の雲行きが怪しくなった時に、直ぐに他の就職先を見つけるカギとなる。アメリカでは元一緒に働いていた弁護士から引っ張られて転職するというのが非常に多い。多くの元同僚弁護士と仲良くしておいて、定期的に連絡を取っていたら、そのうちの一人が、急に多くの仕事を引き受けて一緒に働ける弁護士をさがしているということもある。その際に、「そうだ、あいつを引っ張ろう」と思わせることが必要である。

加えて、日ごろからネットワークの重要性を認識して、どこからどんなクライアントさんがやってくるかアンテナを張っておく必要がある。そのためには、コミュニケーション能力の高さ、人からこいつには仕事を頼んでみたいと思わせるパーソナリティーが必要である。


優秀だけれどもコミュニケーション能力がゼロの人が弁護士になった場合にどうなるかは書かないが、容易に想像できるであろう。成功する可能性は非常に低い。


優秀だけれどもコネがない人は、コミュニケーション能力が非常に高い場合を除いて、弁護士になるべきではない。