2013年1月11日金曜日

アメリカの法律事務所で研修する方法は?-その1

日本の弁護士がアメリカの法律事務所で研修先を探そうとする場合、日本の弁護士に完全に欠けている意識がある。アメリカの法律事務所はリーガルサービスを提供するというビジネスによって営利を追求している団体であるということである。つまり、ビジネス感覚が薄い日本の弁護士は、自分を研修させるとその米国事務所にとってどのような経済的な利益がもたらされるのか、逆に自分を研修させないとどのような経済的な不利益がもたらされるのかを主張するのが重要であるということを意識していない。

日本では一般的に、「どんな仕事でも誠心誠意一生懸命がんばります。」「協調性が高いので、皆と仲良く仕事ができます。」「残業でもなんでもやります。」と言って自分を売り込むのだろうが、それは、アメリカでは通用しない。研修先を探す時に同じ方法で探しても見つかるわけがないのである。アメリカで協調性や事務所内での残業時間はそれほど重視されない。事務所では一人ずつの個室があり、同じオフィス内でもメールや電話でやり取りをする。自分のオフィスの外のブースにいる秘書に電話をかけて指示をしている弁護士も多い。オフィスの外で仕事をするシステムが日本と比較して格段に整っているので、残業があったとしても5時ころにはオフィスを出で、家族と食事した後に、家で仕事する人、金曜日は家で仕事をするパートナーもかなりいる。日本と違って、職場の皆で飲みに行くことが極端に少ない。アメリカでは、他の人と同じ程度コミュニケーション能力があって、たとえ家からであっても時間内に仕事を終わらせられれば、問題ないのである。

つまり、どれだけ事務所のビジネスに貢献できるかが重要であり、協調性やオフィスに長時間残れることなど美徳にならない。

アメリカの事務所側の立場で考えてみよう。たとえ研修生に給料を支払わなかったとしても、研修生を受け入れた場合の不利益として、以下のようなことが考えられる。

オフィスの場所の提供、コンピュータ設定してやるなど費用がかかる。質問にでもこられたら、時間がとられてしまって、クライアントにチャージできる時間が減る。研修生はすぐに使えないので、何か仕事をやらせても自分が仕事を見直さなければならず、倍に時間がかかるが、倍にかかった時間についてはクライアントにチャージできない。たとえ教育して少し使えるようになったとしても、そのころには研修が終わっており、自分の利益には全くならない。同じ時間を使って教育するなら、優秀な成績で有名ロースクールを卒業したアソシエイトを教育して使うほうが、後のためにもなる。

このように研修生を受け入れた場合に事務所が確実に負担する不利益は多い。

これに対してアメリカの事務所が受ける経済的利益はなんだろうかと考えてみる。

 
つづく。。。