2013年1月18日金曜日

アメリカの法律事務所で研修する方法は?-その2


つづき

研修生を受け入れたことで受けられる可能性のある経済的利益とアメリカ事務所が考えているのは一つだけである。

研修生を受け入れることで、クライアントと仕事が来る、またはクライアントを繋ぎ止められる

前述した不利益が確実であるのと比較すると、利益については確実性のレベルが様々であるという問題がある。

研修先を探している日本の弁護士が所属する事務所が既にアメリカの事務所に大きな仕事を依頼している場合で、日本の事務所のパートナーがアメリカの事務所に直接研修生を引き取って欲しいと依頼した場合、アメリカの事務所はほぼ100パーセント研修生を引き受けるだろう。得られる利益の確実性が高いからである。

研修先を探している日本の弁護士が所属する事務所がアメリカで弁護士を使う必要があるようなクライアントを全く持っていない場合は、アメリカで研修先を探すのはほぼ不可能に近いであろう。得られる利益の確実性が極端に低いからである。

アメリカの事務所に大きな事件を依頼しているような日本の大手の弁護士事務所でも、その日本の大手事務所のパートナーが米国事務所に直接研修生を受け入れて欲しいと頼んでくれない場合、研修先を探せる可能性は0%に近くなる。米国事務所の選択権限があるパートナーと話ができなければ、研修生を受け入れたところで、クライアントと仕事がやってくる確立は極めて低くなるからである。

日本の景気が良かった1980年代後半から2000年くらいまでは、日本の弁護士を事務所に一人置いておけば、日本企業から仕事が来るかもしれないと思って、研修生を受け入れていたアメリカの事務所も結構あったが、日本の景気悪化が進む中、そのような時代は終わった。

また、日本のクライアントがいるアメリカ大手事務所は既に東京にオフィスがあり、日本語が話せる弁護士が働いているので、日本企業からの仕事を得られるかもしれないという抽象的な目的だけのために、研修生を引き受ける必要はなくなっている。

最近は、アメリカのロースクールに留学後、研修先を見つけられないまま、日本に帰っていく日本の弁護士も多い。場合によっては、派遣会社に登録して、派遣弁護士としてディスカバリーの手伝いとして日本語のドキュメントをレビューする仕事だけして帰っていく弁護士もいる。

それでは、今の時代に大手事務所のパートナーの口ぞえなしに研修先を探すことは全く不可能なのであろうか。
つづく。。。