2013年2月10日日曜日

軒先も借りていないアメリカのノキ弁?-その2



つづき

過去に重要な国の官庁の重要ポジションに就いていた弁護士などはカウンセルという名前がついていても、ノキ弁ではなく、事務所の宣伝広告塔として雇われている可能性がある。弁護士は、事務所にウエブサイトに名前を連ねることを許し、事務所主催のセミナーの講師をやったり、営業のためのイベントに顔を出すことを条件に給料をもらっている場合もある。例えば、事務所で開催するセミナーの講師として各地、場合によっては各国の出張につれまわされている人も何人か知っている。弁護士と事務所との契約は自由であり、色々な働き方があるのである。

ノキ弁の話に戻るが、司法修習のないアメリカでは、未経験ノキ弁や経験5年以内のアソシエイトレベルの軒弁というのは個人的には聞いたことがない。アメリカでノキ弁になるのは、リストラされた経験弁護士、家族のために家で仕事をしたい弁護士、半分リタイアしている高齢の弁護士等である。

このような働き方を許しているのは一般に中小法律事務所である。事務所としては、経費を最低限に保ったまま対外的には弁護士の数が多いように装うことができ、大きな仕事もできるとクライアントに宣伝できる。実際に仕事が増えたときは、ノキ弁の助けを借りて仕事をこなすこともできるのである。ノキ弁としても利益がある。個人事務所の信用が低いアメリカでは、ある程度の規模がある事務所の一員という形で営業しない限りクライアントをみつけるのは大変だからである。

弁護士が急増している日本でも事務所経費節減を考えてみてはどうか。ウエブサイトでは多数の弁護士が所属しているけれども(大手事務所であるとの信用ができる)、オフィスは会議室と最低限の事務員の執務室、クライアントとの打ち合わせのために事務所に来る弁護士の仮の執務スペースがあるだけである。あとは、オンラインで自宅から仕事をすればいいのである。

画面の大きなスクリーンを二つ重ねれば、ファイルなしでも家から仕事をすることは全く苦にならない。外からサーバーにアクセスできれば、ラップトップを持ち歩けば何処からでも仕事ができる。あとは、クライアント同士のコンフリクトの問題さえクリアすればよい。