2013年12月5日木曜日

見方を間違うと全く参考にならない米国法律事務所への就職体験記

このブログにたどり着く方の中には、アメリカで米国法律事務所に就職を考えている方も多いようだ。「アメリカ 弁護士 就職」などというキーワードで検索すると、他の就職体験記などとともに、このブログもリストアップされるようである。

そのような方のために就職体験記を読む際の注意点を記載しておこう。

就職体験記は、いつの時期の就職活動の話しをしているのかによって全く参考にならないことがある。

2000年以前の就職体験記は現時点ではほとんど参考にならないと言っても過言でないだろう。リーマンショック以前の就職体験記もそれほど参考にならない。2000年以前は日本語を話す弁護士の需要が結構あったが、今はそのような求人はパラリーガルか、ドキュメントレビューをする短期契約弁護士くらいしかない。

また、就職体験記を記載した人のバックグラウンドも重要である。日本の大手企業の法務部や知財部などで働いていた経験がある人が書いた就職体験記は、就職した経験のない人にはほとんど役に立たない。

例えば、MBAを取得しているとか、理系のバックグラウンドがあるとか、キャリア組みの国家公務員だったという経歴がある人が書いている場合、似たような経歴がない人にはあまり役に立たない。

アメリカの法律事務所に就職したいと思っている日本人には酷な話であるが、現実なのでお話ししておこう。
もし、アメリカの普通のロースクールを普通の成績で卒業した日本人が、目を引くような過去の職歴もないまま、大手事務所上から順番に100番までの事務所にカバーレターとともに履歴書を送ったとしよう。ほぼ間違いなく、全て100の事務所から断りのメールが届くか、無視されるかである。

人間は自分に都合の悪いことに目をつぶる傾向があるので、うまくいった就職体験記だけを読んで、自分もアメリカの弁護士として就職できると誤解するかもしれない。

しかし現実は非常に厳しい。トップのロースクールを優秀な成績で卒業したアメリカ人と台頭に戦える能力があるか、特殊なバックグラウンドがあるか、特殊なコネがあるか、人並みはずれて運がよいか、でない限り、アメリカで弁護士として就職することは非常に難しい。また、就職先の事務所にビザをサポートしてもらって働くとなると、さらに困難を伴う。

日本企業に就職することを考えて、ロースクールの1年のLL.M.コースを卒業して米国弁護士になるなら理解できる投資であるが、アメリカの法律事務所に就職したいと思っている場合は、ロースクールに投資することは大きなギャンブルといえる。

ネットで見た就職体験記を自分の都合の良いように解釈して安易に1500万円のJDの学費と3年間の時間を費やして卒業後の確かなプランもないまま留学するのは危険である。