2013年12月12日木曜日

弁護士の数が増えると弁護士費用が安くなるの大間違い

アップルとサムソンの米国特許争いはアメリカ法曹の間でも話題になっているが、この争いにかかっている弁護士費用を見れば、弁護士数が増えても弁護士費用が安くならないことの証拠になるだろう。

アップルはサムソンに対して、既に費やした弁護士費用のうち、15.7億円(1ドル100円で換算)の支払いを求める申し立てをしたというニュースが出ている。
http://appleinsider.com/articles/13/12/06/apple-spent-60-million-on-samsung-suit-attempts-to-recoup-157-million

この16億円近い請求額に驚くが、これは、アップルがこの紛争に費やした弁護士費用の一部分に過ぎないのである。

さらに、アップルは特許紛争以外にも弁護士費用を費やしているだろうから、リーガルに費やす費用はいったいいくらになっているのか想像を絶する。

他のプラクティス分野でも、弁護士が増えても有名な弁護士の弁護士費用が下がることは一向にない。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MXMKLX6K50XX01.html
1時間10万円以上の報酬を要求する弁護士に何時間も働いてもらおうとする企業があるのだ。

費用が高くても有名で経験のある弁護士に依頼するのは、弁護士数が多いために、弁護士の能力の保証がなく、経験不足の弁護士が数多くいるため、有名で経験が豊富とされる一部の弁護士に事件が集中するからだと考える。
一部の弁護士に依頼が集中することで、さらに経験豊富な弁護士の数が減るという悪循環を繰り返している。

また、弁護士の人数が多いために専門化が進み、特に大手事務所の有名弁護士を含む弁護士は専門以外の分野については経験もなければ知識もない。そこで、大中企業は分野ごとに違う弁護士を雇わざるを得ず、さらに弁護士費用が増している。

アメリカでは弁護士の資格は持っているが、弁護士としての実務経験がないため弁護士としての業務を行っていない人が数多くいる。ロースクールを卒業してから弁護士業以外しか行ったことのない者は、大抵の場合、事実上弁護士として働くことができなくなる。ただ、日本と違って弁護士登録費用が安いので、そのまま弁護士として登録しているままになっている人も多い。

アメリカのロースクールはある意味、弁護士という資格を持っているが、弁護士としての実務はできない人を大量に生み出している制度なのである。それも影響してか、弁護士費用が一向に下がらない。


弁護士報酬の二極化