2014年5月19日月曜日

クライアントを訴える法律事務所?


Kelly Drye & Warren, LLPがクライアントであったOrbusneichに対して14,560,000ドル(1ドル100円で計算すると14億円を超える)弁護士費用を支払えという訴えを起こしているようだ。訴訟に至った内容について説明はしないが、支払いを拒否するクライアントの主張も十分理解できる事案である。
http://patentlyo.com/hricik/2014/05/kelley-collecting-million.html

確かに法律事務所自体が直接クライアントを訴えるのはそれほど多いことではない。
ただ、6ヶ月以上支払いがなかった弁護士報酬債権を債権回収会社に売却するのは一般的である。その場合、債権回収会社が支払いを求めてクライアントに対し、訴訟を起こすことは十分ありうる。

大きな事務所になればなるほど、債権回収会社に売却してしまいがちである。弁護士数が100人に満たないような小規模の事務所であれば、僅か年間3000万円の仕事を依頼するクライアントでも大事なクライアントであるので、遅れながらも弁護士報酬を支払ってくれそうで今後も継続してクライアントとして仕事を依頼してくれる見込みがある場合には、訴訟とか債権回収会社に売却するようなことはなるべく避けようとするかもしれない。しかし、弁護士が1000人規模の法律事務所から見れば、たとえ年間1億円の弁護士報酬を発生させる仕事を依頼するクライアントだったとしても全体の収入から見れば、1パーセントにも満たないのである。ビジネスライクに債権処理をすることになる。そこで、そのクライアントとの関係によっては、容易に債権回収会社に弁護士報酬債権を売却してしまう可能性が高くなる。


このままの司法改革を進め、さらに予備試験に受験制限をつければ、日本の法律事務所が衰退するかも知れないという投稿を以前にしているが、もし、外資系法律事務所が日本法に関する企業法務を担当するようになった場合、支払いを遅滞しているクライアントの弁護士報酬債権が債権回収会社に売却され、債権回収会社がクライアントに対して訴訟提起するのが一般的な時代になるかもしれない。