2013年9月25日水曜日

今後は弁護士を目指すべきでないだろう ― たとえ司法改革がなかったとしても


司法改革の失敗により、法曹を目指す人が減ったと言われているが、司法改革がなかったとしても日本の弁護士を目指すことを人に勧めるかと聞かれれば、多分勧めないのではないかと思う。

バブル期の日本の人口はアメリカの人口の半分であり、第2の経済大国であった。当時、中国はグローバルな経済活動からは遮断された眠る大国であった。
現在日本の人口は、アメリカの人口の3分の1に近づいている。第2の経済大国の座を中国に譲り渡した。これから生産人口は激減する。優良な企業は日本国内より海外での販売を重視する。ソニーの新しいプレーステーションは日本で発売される3ヶ月も前にアメリカやヨーロッパで発売されることになっているそうだ。日本の企業ですら、日本市場を重要視しなくなってきた今、海外の企業が日本市場を重視するだろうか。最近の大企業は日本語が話せる外国人を多く採用している。

現在一時的に景気が良くなっているが、過剰な国債発行や少子高齢化等の根本的な問題が解決される兆しは全くない。東京オリンピックが終わった後あたりから、一時的に忘れられていた問題が再認識されるようになるだろう。

縮小していく日本でしか通用しないことだけを学んでもこれから30年、40年現役を続けなければならない若い世代が将来食っていけるかどうか疑問を感じる。海外でも通用する何かを持っている者と、日本でしか通用しないことしかできない者との格差が開くことは確実だろう。日本でしか通用しないことを仕事として食っていくためには、国家による保護主義的な政策と、国内だけで需要を充たせる人口が必要であるが、今の日本からそのどちらもなくなりつつある。

今後生き残るために英語ができることは必須条件で、さらにプラスして海外でも通用する専門分野を持つことが必要となる。その専門分野に関しては英語で説明できる能力が必要になる。

30年40年前は外国語ができることで個人が得られる情報にあまり差はなかったが、インターネットを通じてどのような情報も手に入れられる現在では、日本語しか分からないのと、外国語、例えば英語が分かるのとでは得られる情報が全く異なる。日本語しか分からないのでは文盲と同じである。同じはずの情報が日本語では不正確な場合もある。例えば、今日のニュースで、日本語では「東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズが経営統合」となっているが、英語のニュースではすべて、「アプライドマテリアルズが東京エレクトロンを買収」と記載されている。随分ニュアンスが違う。英語が分かれば、アメリカの有名な大学の授業がYoutube等で無料で見ることができる。

インターネットの発達により、現在は離れた所からリモートで仕事ができる。場合によっては海外でも仕事ができるので、能力さえあれば、日本にいながら海外の会社の仕事をすることも可能である。逆に海外にいながら、日本の会社のために仕事をすることができる。つまり能力さえあれば、仕事の可能性が格段に広がる。反対に、今まで日本語という壁に守られていた仕事が海外に流出する可能性がある。つまり日本語しかできないことで仕事が得られなくなる可能性があるのだ。

今から弁護士を目指すというのは、日本でしか通用しないものを勉強することになる。かなり優秀でない限り、3年~4年という長い時間がかかるし体力も消耗してしまう。それにより、必須条件の英語と国際的に通用する専門分野を学ぶ時間と気力を失う人が多い。

これから30年、40年現役を続けなければならない若い世代のためになって考えると、たとえ法科大学院への学費などがなかったとしても、日本の弁護士は心から勧められる職業とは言いがたい。他の事を学ぶ時間を潰してまで目指すべき職業なのだろうかと疑問を感じないではいられない。

さらに付け加えると、今回の司法改革で十分認識されたと思うが、弁護士というのは、国が制度をいじっただけで、路頭に迷ってしまう者が多く出てしまうような職業である。日本の法制度変更によって日本での外国弁護士の活躍の場がさらに増えれば、日本でしか通用しない日本の弁護士資格のみによって食べていくのはますます大変になるだろう。


最後に付け加えると、アメリカの弁護士資格と違って、日本の弁護士である旨を名刺に記載するには、強制加入である弁護士会に所属し、年間60万円から100万円の弁護士会費を支払わなければならない。アメリカの弁護士資格であれば、単に名刺に「弁護士」と記載するために登録したとしても、経費はほとんどかからない。例えばニューヨーク州は2年間で、375ドル、つまり4万円弱である。つまり、日本の弁護士資格を資格として使わない人が名刺に「弁護士」と記載して対外的に交渉相手からの信頼を得るというという目的で登録しておくにはあまりにも経費が高く、使い勝手が悪すぎる。年間60万円を40年支払い続けたら2400万円になるが、日本の弁護士であることにそれだけの価値があるだろうか。経費がかかりすぎるから弁護士資格を得ても登録する予定はないという人がいるかもしれない。しかし、最初から弁護士登録する予定がないのであれば、法曹資格を目指す意味があるのだろうか。名刺に弁護士と記載することもできないのだから。