2012年11月10日土曜日

法律事務所の辞め方 ― その1


事務所を自発的に辞めて転職する場合もアメリカの法律事務所ならではの特徴がある。

事務所を辞めた後の転職先として大きく分けると、他の事務所に移籍する場合と、企業のインハウス弁護士になったり政府機関の弁護士として働く場合がある。他の事務所に移籍する場合にも大きく分けると二つのパターンがある。アソシエイトレベルの弁護士が仕事のある他の事務所に移籍する場合と、パートナーやカウンセルレベルの弁護士がクライアントを持って他の事務所に移ってしまう場合がある。これ以外にもパートナーやカウンセルレベルの弁護士が一人でまたは友人らと個人事務所を立ち上げるために辞めることもリーマンショック後増えてきたように思うが、ここでは割愛する。

企業のインハウス弁護士として転職する場合、「自分はこんなに職場で大事にされてきたんだ、本当に良い職場だった」と誤解してしまうくらいちやほやされながら転職することができる。特に、転職する企業が大手企業であればあるほどである。これが何を意味するかというと、法律事務所はその転職先の企業を将来的にクライアントにできないかという下心があるのだ。つまり、インハウス弁護士とこれからも良い関係を保ちながら連絡を取り合い、その企業が外部の弁護士を使うときには是非うちの法律事務所を使ってもらおうという下心がある。従って、大手企業のインハウスになるために事務所を辞める時には、非常に円満に辞めることができる。事務所のお金でお別れディナーをやってもらえるかもしれないし、今後も事務所でのクリスマスパーティーなどに招待されるかもしれない。

他の事務所に移籍する場合、アソシエイトレベルが、他の事務所にアソシエイトとして移籍するために事務所を辞める場合、問題が生じることはあまりないが、インハウス弁護士になる場合のような良い待遇は受けられない。通常、辞める2週間前にパートナーに辞める旨を伝える。考え直さないかとひきとめるパートナーもいるが、次の事務所が決まっている場合にひきとめることは難しいので、どこまで本気でひきとめようとしているのは分からない。事務所もお別れランチを数人で食べに行くくらいのお金は出してくれるかもしれない。

一番問題が多いのは、パートナー弁護士がクライアントごと事務所を移籍する場合である。
 

つづく。。。