アメリカには弁護士資格を持っている人の数は日本の弁護士の数とは比較にならないほどである。ニューヨーク州では年に2回、7月と2月にあるが、二つの試験を合計して1万人近くが合格する。これはアメリカ全土の合格者の数ではなく、1つの州に過ぎないニューヨーク州の合格者である。日本の人口の3倍弱のアメリカであるが、たった一つの州に過ぎないニューヨーク州で、日本全国の合格者の3倍を余裕で超える司法試験合格者を輩出している。
「これだけ弁護士の数が多ければ、弁護士間の競争が激しくなって、さぞ弁護士報酬が安くなるだろう」と思うかも知れないが、そんなことがないのが不思議である。大手事務所のパートナーレベルは1時間600ドルから1000ドル、アソシエイトレベルでも350ドルから550ドルと高額なチャージである。1時間1000ドルの弁護士であれば、1ドル93円で計算して、1時間9万3千円のチャージである。そんな高い弁護士に2日間で10時間働いてもらっただけで93万円のチャージとなる。
複数の大企業が被告として訴えられた際に、複数被告の有名な大事務所の弁護士たちが行った電話会議に出席したことがある。大手有名どころのパートナー弁護士が20人以上出席していた。二人の弁護士の出席が遅れ、少し待っていたが、一人のパートナーが「もう、待たずにはじめよう。こうやって待っているだけで、高額のチャージが無駄になってしまうのだから」っと会議の開始を提案した。
チャージは通常6分からつける。なぜなら、0.1時間は6分だからである。1時間800ドルの弁護士が20人、6分待てば、80ドル×20で1600ドルの無駄になるのである。6分で約15万円、1時間で約150万円である。
リーマンショックでパートナー弁護士のアワリーレートは少し下がったようであるが、それでも600ドル以上なのは変わらない。逆にアソシエイトのレートはリーマンショック以降少し高くなった気さえする。
何故、弁護士がこれだけ多いアメリカで、これほど高い弁護士報酬を請求し続けることができるのであろうか。