2013年11月19日火曜日

アメリカ式履歴書が物語る日米の働き方の違い

アメリカで初めて就職活動をしたときは、アメリカ形式の履歴書に面食らった。しかし、今では、アメリカ形式の履歴書の方が優れているし、合理的だと思っている。
逆に、雇用するか決定する上での重要な情報が完全に抜け落ちている日本の履歴書は役に立たないとすら感じている。

アメリカの履歴書には、写真の添付と生年月日の記載がない。日本のように「40歳くらいまで」と募集要項に年齢を記載することは禁止されるので、生年月日を書かないのである。
また、名前からでは人種も分からないし、名前によっては性別が分からないこともある。

ただ、面接に呼ぶかどうか判断するために重要な内容は十分に記載されている。
以前の職場でどのような業務を行っていたかが的確に記載されている。また業務に関して、自分が講師をしたセミナーの記載、出版物や発表した論文などが記載されている。

アメリカはat willで雇われている場合、いつでも自由に解雇される可能性がある。また、同じ職場で同じ仕事を続けた場合に出世する可能性は比較的少ない。例えば、会社内部の人が出世してマネージャーになるとは限らない。外部から経験豊富な人をマネージャーとして新たに雇い入れることも多いのである。したがって、働きながらビジネススクールを卒業したり、今の職場で習得した技能をもとに再就職して今より高いポジションを得ようとする人は多い。

このため、向上心のあるアメリカ人は定期的に履歴書をアップデートしている。
というよりか、アップデートできるように日ごろから職場内と職場外で自己研鑽をする。

例えば、オフィスで分担する仕事についても、履歴書に書けば有利になる仕事、つまり転職先を見つけやすくなる仕事を担当しようとする。そして担当した仕事を履歴書に書き加える。弁護士であれば、履歴書の職歴欄で実際にこなした業務として「ドキュメントレビュー、日本のクライアントとのコニュニケーション」と記載してある履歴書と、「デポジションで証人に尋問、サマリージャッジメント申立書の起案」と記載されている履歴書とでは、雲泥の差である。前者は、パラリーガルのようなことをやっている弁護士という印象を与え、後者は弁護士としての仕事をしている弁護士という印象が伝わる。当然、後者の弁護士の方が面接に呼ばれる可能性が高くなるだろう*。

アメリカ式の履歴書は、自分の雇用市場での価値を常に考えることにつながる。

日本の履歴書は基本的に転職することを念頭においていない。たとえ転職するとしても、どこの大学を卒業したか、どこの会社で働いてたかという形式的なことが重要な判断材料となる。しかし、それらはあまり役に立つような内容でない。

一定の技能を持った人を雇い入れたいという場合には、国家資格試験を基準に判断するしかない。それが原因なのか日本にはやたらたくさんの国家資格があるような気がする。


日米の履歴書の違いは日米の働き方の違いに反映されている気がする。




*(注)ある程度経験年数のある弁護士が他の法律事務所に転職する場合は、クライアントをどの程度持っているかの方が重要である。