2018年4月20日金曜日

二世弁護士の落とし穴

以前から知っているあるアメリカの中堅ブティック事務所のウエブサイトを何気なく見てみた。すると、パートナーの半分近くが急にいなくなっていた。さらによく見てみると、事務所の権力者であるネームドパートナーの息子がアソシエイトとして事務所に入所していた。
以前、そのネームドパートナーが、息子に後を継がせたがっているという噂を聞いたことがあった。

はあ~、そうか、きっとこれが原因か。


ある程度の数のパートナーがいる事務所であるにも関わらず、ネームドパートナーが事務所名に自分の名前が入っているために自分個人の事務所であると勘違いし、自分の子供に引き継がせようと無理をして、事務所が分裂したという話はよく聞く。

一定の年齢になると、子供に自分の事務所を継がせたいという気持ちになるのだろうが、完全に自分一人にだけクライアントがついている個人事務所のような事務所でないと、事務所内騒動の原因となる。経験が浅く、生意気な息子をパートナーにしようとすれば、ポータブルクライアントを持っているパートナーがそれに反対して、クライアントを持って他の事務所に移籍しようとする、またはパートナーがまとまってクライアントごと外にでて新しい事務所を設立するというのは理解できるし、実際にこのような話も聞く。

そのような内部抗争に嫌気がさして、息子までもが事務所を継がせようとする親を見放したという話もある。



思慮深い親であれば、他に何人かパートナーがいる事務所に子供を就職させないようにするのが得策なのかもしれない。

2018年4月16日月曜日

新卒就職の売り手市場と日本の司法試験

以前、司法試験の受験者数と、新卒の就職が売り手市場か買い手市場かは、相関関係があると思ったことがある。
つまり、景気が落ち込んで新卒の就職率が下がると、その3年後くらいから徐々に司法試験の受験者数が増加する。
景気が回復し、新卒の就職率が上がると、その後、司法試験の受験者数が減少する。

特に顕著なのが、昭和60年代のバブル期である。その直前まで司法試験の合格率が2パーセントを切っていたので、司法浪人がかなりいたと思われるが、バブル期に入ると、新卒のみならず、司法浪人だった人まで、就職先を見つけて司法試験をあきらめたと思われる。その証拠に、それまで伸び続けた司法試験受験者数が減少している。
さらに、バブルが崩壊して就職氷河期が到来するが、その3年後くらいから旧司法試験の受験者は増加の一途をたどった。

旧試験の受験者数と合格者数の推移 (法務省ウエブサイトから)
http://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/press_081009-1_20syutu-gou2.html


現在、新卒の就職は売り手市場と言われているが、これによってさらに法科大学院への進学が減少することが予想され、弁護士資格の魅力が減少したことによる進学者の減少に追い打ちをかけることになるだろう。


もう、法曹界を活性化することはできないのであろうか。
諦めるのはまだ早いのではないか。

司法試験を活性化させるためには、法科大学院卒業を司法試験受験要件から外すことであるが、その理由は、今まで法科大学院反対者が一様に唱えてきたものとは少し違う。

現在、終身雇用が崩れてきており、終身雇用を信じて就職した世代、特にバブル就職世代が、終身雇用が崩れてきたことに危機感を感じて、仕事を続けながら何らかの資格やスキルを取得したいと考えている。70歳まで働かなければならない時代、40代から50代前半は、70歳まで働くために備えなければならない時期であり、文系の人にとって司法試験は魅力的な資格に見えるかもしれない。新卒が司法試験だけ合格しても社会経験と人脈がないために役に立たないことが多いが、この世代の経験豊富で人脈豊かな地頭の良い人が司法試験に合格すれば就職の役に立つだけでなく、社会の役にも立つであろう。
しかし、この世代が司法試験を受験したいと思っても法科大学院卒業の壁が立ちはだかり、予備試験は重荷すぎる。

天下りが世間から批判されている国家一種試験を合格したキャリア組は、40代後半から50代には、官庁内のポストが減少するため、外に出なければならない状態に追い込まれることがある。法科大学院卒業の受験要件がなくなれば、もともと地頭が良かった彼らなどは喜んで司法試験を受験するだろう。現に予備試験を受験すると言っていた人に会ったこともある。

社会で経験を積んだ地頭の良い人たちが、司法試験を受験してくれれば、法曹界も以前のような活気を取り戻せるかもしれないし、まさしく企業が望んでいるような経営と企業を理解し海外についても理解しているような弁護士が誕生する可能性を高くするのかもしれない。

法曹界が死に体になる前に対策を打てないものだろうか。

2018年4月4日水曜日

法科大学院の二の舞か

日経新聞が、「日本式ロビー活動 永田町から大阪へ、地方へ」という記事を書き、アメリカのロビー活動を美化している。

ロビー活動は、資力のあるものが合法に金の力を使って、議員たちに自分の言うことを聞かせようとする活動にすぎない。実際、ロビーストのロビー活動で重要なのは、重要な人脈を持っていて如何に裏情報を集められるかである。つまり、どれだけ政治家のお友達を持つかである。

アメリカではロビーストが登録制だから公平と言ってみても、実際に働きかけをせずに裏情報だけを集めている人は登録していないことも多い。

アメリカでは多くの企業、アメリカ以外の国の政府までもロビーストにお金を支払って活動してもらっているが、実際には単にぼったくりなのか、役に立っているのかあまり分かっていない場合も多いようだ。

ウーバーがアメリカで拡大する際に規制緩和を求めてロビー活動をしたことは知られているが、彼らは同じことを日本でもやっているようである。

アメリカでは、議会議員の多くが弁護士資格を持ち、日本とは比較にならないほど多くの弁護士資格を持つ秘書を抱えており、すべての法案は議員立法案としてあがってくる。だからこそ、議員に対して法制の提案をするというロビー活動が成り立っているのである。

これに対し、弁護士資格がない議員が圧倒的多数で、秘書の数が非常に少なく、法案作成ができるような秘書は皆無で、すべての法律は官庁が起案している日本では、ロビー活動の基礎がないのである。直接官僚に働きかけをしたら、それこそ問題である。

アメリカを真似して、「日本式ロビー活動」とは、日本とアメリカの違いを十分に考えずにアメリカのロースクールを真似した法科大学院制度を導入した時のことを思い出さずにはいられない。

2018年3月19日月曜日

マチ弁の経営が苦しくなりやすいもう一つの理由

あまり話題にならないが、マチ弁として事務所を経営するのが難しい理由として忘れてはならないことがあると思う。

それは、個人と企業の税金に関する弁護士費用の位置づけである。

つまり、企業にとって弁護士費用は課税の控除となる経費であるが、個人にとっては、すべての税金等を支払った後の手取りからさらに払うことが要求される完全なる余計な出費である。

企業の業績が良い時期には、弁護士に支払った費用は、課税額から控除されるので、弁護士に支払った費用の重みは、すべての税金等を支払った手取り金から支払わなければならない個人と比較するとかなり軽いものとなる。

それだけではない。日本の過去10年くらいを見ると、国際競争力を鑑みた政策を理由に法人税はここ減額されているが、高齢化社会を背景に個人から徴収される税金等は逆に増えている。消費税増税も個人により重くのしかかのしかかる。
アメリカでもトランプ政権による大型法人税減税が成立した。

ここ10年で企業が弁護士費用にまわせる金額は同じか増えていると思われるが、個人に関しては減っていると思われる。

マチ弁の経営が苦しくなる理由は、弁護士の増加とか、ネットの普及など、他にも色々あると思うが、このような理由を挙げる人は少ないと思うので、一言付け加えたい。

2017年12月20日水曜日

法曹界だけではない

最近、アメリカの銀行の支店を改装して、今まであった銀行窓口をきれいさっぱりとなくす例が急増している。多機能のATMが増え、窓口がなくなり、個室になっている相談窓口だけが残っているのである。窓口で働いていた人はどこに行ったのだろうか。自分自身も、ほとんどの銀行関連の用事はインターネットを通じて済ませているし、現金を使うこともほとんどないので、お金を引き落とすことも滅多にない。日本の銀行でも大規模なリストラをするようであるが、15年前には、全く想像できなかった。今までの産業の常識がガラガラと音を立てて崩れている。

自動車業界をみると、15年前には考えられなかったテスラのような電気自動車の高級車が注目を浴びている。中国や欧州などでは積極的に電気自動車の普及を急ぐようであるから、電気自動車が主流になるという時代が来るのは遠いことではない。
そうなったら、ガソリンエンジン関連の部品を作っている会社にとっては、大変な時代がやってくる。ガソリン関連の会社も大きな転換を迫られる。

さらに、アメリカでは歯医者がオフィスに備えられた3Dプリンターのような機械で自前でクラウンを作るというのが増えており、歯科技工士のオフィスにクラウンの作成を依頼する数が大幅に減っているようだ。ここでも、業界の常識が崩れ始めている。


どんな業界にいたとしても、変化の速度が速い現代においては、一寸先は闇である。それは、法曹界に限ったことではないのである。
いつでも、アンテナを張り巡らせ、どのような変化が来るか、その変化に備えるためには何をすべきかを、適格に判断し、準備しておく必要がある。

司法改革についても同じである。司法改革が行われた時に法曹界にいた人たちが、一般人と同じ中立な立場で、司法改革によって、優秀な人が法曹を目指さなくなったことなどを理由に司法改革制度自体を批判することは、問題ない。
しかし、自分たちの仕事が減ったことの原因は司法改革にあるとして司法改革を批判することは、お門違いである。どのような職業についていたとしても、常に先を見て、それを前提として自分のスキルを需要に合わせて磨く必要があるからである。


2017年7月24日月曜日

法科大学院は加速させただけ

法科大学院は、司法改革の失敗としてやり玉に挙げられるが、結局、法科大学院がなかったとしても、マチ弁の状況は、今と同じようなことになったのではないかと思う。ただ、これほど急ではなく、少しずつ少しずつと。

少子高齢化に対する対策がほとんどないなか、企業は、着実に外を向いている。日本企業が海外で得る利益の比率が増えている。去年、アジアの国の中で、アメリカの企業を買収した総額は、中国を抜いて日本が1番であったと、あるアメリカの法律専門ウエブサイトが報じていた。

これはつまり、日本国内に関するものだけを扱う弁護士の需要が下がっていくことを意味しているのではないか。

また、日本の人口に占めるリタイア層が増えてくるのもマチ弁を直撃する。リタイアした高齢者がマチ弁に弁護士費用を支払えないだろう。
また、昔と比較して生活が苦しくなっている若者がマチ弁払うお金はないだろう。

また、インターネットの普及により、遅かれ早かれ、弁護士ドットコム等の、マチ弁の弁護士報酬を低下させ、マチ弁を疲弊させるウエブサイトが発達するのは避けられなかったはずである。

また、法科大学院がなかったとしても、年間の合格者を1500人程度に増やすことはできたのであるから、今ほど急激ではないとしても、裁判官や検察官の人数が増えなければ、廃業する人と比較すれば弁護士の数が着実に毎年1000人くらいは増え続けたわけである。

たとえ法科大学院ができなかったとしても、マチ弁の仕事が減り、人数が増えるというのは変わらないのだから、マチ弁が仕事にあぶれ、収入が減るという事態は長期的な目で見れば避けられなかっただろう。


ただ、法科大学院がなければ一つだけ違ったのは、弁護士になるまでにかかる費用を大幅に圧縮することが可能で、弁護士になるのが最終目的というわけではない優秀な人がとりあえず司法試験を受けてみるかと受験してくれたかもしれないという点だ。実際、法科大学院ができる以前は、国家一種を受験した人が、結構、ついでに司法試験を受験しており、その多くが択一試験に合格し、なかには最終合格している人もいるのである。
このようなかたちで司法試験に合格する人がいれば、他の分野で少し経験を積んだ後に、考えを変えて弁護士になるかもしれないし、多様な人材が法曹界に入るきっかけにもなったかもしれない。









2017年6月19日月曜日

日本の弁護士資格が有益な場合

日本の弁護士資格が有益な場合として一つ考えられるのは、カリフォルニア州の司法試験の受験資格を得られることだ。

ひと昔前までは、日本の弁理士の資格でもカリフォルニア州の司法試験を受験できたそうだが、もう、それはできなくなった。アメリカでPatent attorneyというと、弁護士資格と弁理士資格と両方の資格を持っている場合を指し、弁理士資格のみを有する場合は、Patent Agentと呼ぶ。日本では、弁理士会が会の名前を英訳するときにJapan Patent Attorneys Associationと訳しており、日本の弁理士の方々は自己紹介を英語でするときに、Japanese Patent Attorneyであると言っている。これが理由なのか、外国の弁護士に受験資格を認めていたカリフォルニア州は、日本の弁理士にも受験資格を認めていたようだ。しかし、最近認められなくなった。

カリフォルニア州で弁護士として登録して5年間何も問題がなければ、今度はワシントンDCの弁護士として弁護士登録することができる。

重要なのは、日本には、予備試験があり、頭が良ければ法科大学院に通う必要がない。さらには、修習の給付制度が復活したようなので、予備試験、司法試験、給付制の司法修習を経て、カリフォルニア州の司法試験に合格すれば、ロースクールの学費を支払うことなく米国弁護士になれるということである。米国のロースクールは信じられないほど学費が高い。これを支払わないでアメリカの弁護士になれるなんて、アメリカ人から羨ましがられるだろう。
人生の最初に借金まみれにならなくてもすむのである。
補足すると、カリフォルニア州は、今まで3日間であった試験の日程が他の州と同じように2日間に短縮された。

最後に問題になるのは、カリフォルニア州の弁護士資格を得た後に、会費が高い日本の弁護士登録を続けるべきか否かということに尽きる。


もし、アメリカに留学したいのであれば、ロースクールに留学するのではなく、ビジネススクールに留学するのが良いと思う。ロースクールはただひたすら言われた課題を読んで、一人で勉強することにほとんどの時間を費やさなければならないが、ビジネススクールであれば、グループごとにプレゼンをすることも多く、他の学生と共同で話し合いながら課題をこなしていく機会が多い。また、ビジネスにネットワークは重要であるとの認識から、アメリカ人学生が海外の学生とのネットワークを広げることにも積極的である。

2017年6月6日火曜日

情報の非対称性による逆選択

出張で日本の飛行機に乗った時に何気なく見た番組で説明されていた「情報の非対称性による逆選択」という言葉が今の日本の弁護士業界に当てはまるような気がしてならない。

番組では、消費者と生産者側の情報量が対象でない場合、つまり、消費者側に情報があまりなく、生産者側に情報が偏っている場合をを「情報の非対称性」というと説明があり、その例に、ワインが挙げられていた。それだけなら、「なるほど」という程度である。

面白いと思った話はプレミアムワインと普通のワインの例である。例えば、高いプレミアムワインと安い普通のワインがあり、消費者側がどうしてプレミアムワインが高いのか、その情報がない場合、分からない場合、プレミアムワインを選ばなくなり、プレミアムワインが売れなくなるので、最終的に、プレミアムワインは市場から消え、消費者がプレミアムワインと楽しむことができなくなるという話である。

これは、まさしく、今の弁護士業界に当てはまるのではないか。大手企業などは、インハウス弁護士も複数いるので、弁護士業務に関する情報も豊富で、プレミアム・リーガルサービスを受けるために高額な弁護士費用を支払う動機もある。これに対して一般の一生に1回弁護士に依頼するかどうかという程度の個人だと、弁護士業務や特定の弁護士に関する正確な情報があまりなく、「情報の非対称性」がそのまま当てはまる。そうすると、安いサービスを提供する弁護士がいれば、高い費用を支払ってプレミアム・リーガルサービスを受けるという動機もなくなり、プレミアムサービスを提供する弁護士は市場からいなくなるのではないか。

つまり、大手企業に対してリーガルサービスを提供する事務所はプレミアム・リーガルフィーを請求しても生き残れるが、一般消費者向けにリーガルサービスを提供する事務所は、プレミアム・リーガルフィーを請求する事務所は生き残れなくなり、料金を安くして薄利多売などの方法で生き残るしかなくなるのではないか。



2016年12月21日水曜日

日本の弁護士会費は正気の沙汰ではない!?

大手法律事務所が個々の弁護士が負担している弁護士費用を負担するのは、一般的である。

アメリカの弁護士になったばかりの頃、当時アソシエイトとして働き始めた事務所のパートナーが「日本の弁護士会費も事務所で負担してもらえると思うよ」というので、「えっ。本当ですか。年間6000ドルくらいかかるのですが、大丈夫ですか?」と答えると、「年間6000ドルもするのか???」と言ったまま、パートナーは、言葉が出なくなっていた。

その後、言うまでもないが、そのパートナーが、日本の弁護士会費の話を持ち出すことはなかった。

やはり、日本の弁護士会費はアメリカの弁護士にとったら、正気の沙汰ではないのであろう。

2016年12月8日木曜日

カジノで金を失うのは誰なのか?

法曹とは関係ないが、カジノ先進国のアメリカから一言いいたい。

日本人がカジノと聞いて思い浮かべるイメージはラスベガスのような若い人たちが、おしゃれな格好をしてバケーションを楽しんでいる華やかなものであろう。

もしかすると、それは瞑想かもしれないという話をしたい。

以前、ニュージャージーの郊外にあるアトランティックシティーという街にあるカジノに平日の昼間に行ったことがある。ラスベガスのようなカジノのイメージを描いてカジノのドアを開いたのであるが、思い描いたイメージとの違いに愕然とした。中は養老院かと思うほど、高齢者が目立っていた。中には杖をついている人もかなりいた。同じ市内の他のカジノに行っても状況は同じであった。

特に、スロットマシーンに夢中になっている高齢者が多くいた。そういえば、友人が、高齢の親がカジノに行ってしまって困っているという話をしていたのを思い出した。高齢になると、痴呆症にならないにしろ、自己を抑止する力が衰えてくるのではないかと思う。

補足であるが、以前、仕事の関係で何件かスロットマシーンの特許の明細書を読んだことがある。スロットマシーンの特許は、どうやれば、一般の人が何度も何度も同じスロットゲームをやりたくなって、カジノに戻ってきてくれるかに発明性があると主張しており、そこに特許性が認められていた。つまり、どうすれば一般の人がギャンブル中毒になるか、その方法を見つけて特許しているのである。中毒になる人がいればいるほど、カジノは儲かるからである。

若い人がギャンブル中毒にかかってしまった場合、中毒を直すセラピーによって中毒が治った場合、再度働くことができるが、高齢者が中毒にかかった場合、老後の蓄えを使い果たし、中毒が治ったとしても再度働くことも難しいので、残された道は生活保護である。

カジノの経済的効果があることは否定しないが、既に昼間にやることのない高齢者がたくさんいる日本でカジノを作った場合、老後の資金を使い果たす高齢者が増えて、生活保護費用が増すかもしれない。政府としては経済的に見てもプラスよりマイナスの方が多くなる可能性があるかを総合的に検討すべきだろう。




2016年12月5日月曜日

法律事務所は営利目的法人

アメリカでは、LLC (limited liability company)によってリーガルサービスを提供することを許している州もかなり、LLCとして設立された法律事務所も最近増えていると聞く。
そんな法律事務所のなかには、外部のマネージメントコンサルタント会社が経営に深くかかわっているところがあると聞く。リーガルサービスを提供してコンスタントに利益を得るためには、どのように営業をすべきなのか、誰をクライアントにして誰をクライアントにしないかなど、経営にかかわるかなりの事項を外部のマネージメントコンサルタント会社が決定し、パートナーですら、そのような決定権限がないという事務所すらあるそうだ。

そういえば、ある法律事務所に、簡単に言うと「御社の案件は、他の企業の案件を利益相反で受任できなくしてしまう割には、仕事量が少なくて事務所の利益にならないので、お断りさせていただきます。」と言われたと、ある日本企業の人が怒っていた。

ここまではっきり言う事務所は少ないと思うが、法律事務所が企業のように利益を追求し、外部マーケティングの専門家を雇って、事務所にとって最も利益が出るのはどのような場合かをもとに経営判断をする時代が来ている。

日本でもマーケティングに関するコンサルタント会社のセミナーに参加している弁護士が大勢いる。「弁護士は人権保護を。。。」と言っている時代は終わりに近づいているのではないか。

2016年11月7日月曜日

当たり前のことであるが

最近、ビジネスに関心を持っており、ちょっと年配のアメリカ人と話をしている際に、何気なく「ビジネススクールに行ってみたいなあ」とつぶやいた。すると、下記のような忠告を受けてしまった。

「ビジネススクールに行くかどうかを決定するには、ビジネススクールの学費がいくらになるかしか考えていないかもしれないけれども、ビジネススクールに行っている間仕事をしないのであれば、その間に得られるはずの収入をプラスしなければならない。その合計額を、ビジネススクールに行ったことで、現在よりもいくら多く年収を得られる職に就けるかどうかを予想し、ビジネススクールに行ったことで失った収入プラス学費を何年間で回収できるかを計算するんだよ。それをもとに、ビジネススクールに行くかどうかを決定しなければならない。そうすると、かなりの場合、ビジネススクールに行くこと、特に、有名な学費の高いビジネスに行っても元が取れないんだよ。」

確かにそう考えると、仕事を辞めて、自分の金でビジネススクールに行くなんてとんでもない話だと思った。どう考えても元が取れるとは思えない。

それと同時にいくつかの考えが頭を巡った。

日本の大手企業、特に商社などは、若手の優秀社員をビジネススクールや、ロースクールに会社のお金で行かせて、さらにその間、給料まで出すということをしているが、その場合、社員にとってみれば学位が取れて、知識が増えて、履歴書の見栄えが良くなるが、失うものは何もないわけだ。学位を取り終わった後に就職活動をする必要もない。アメリカに留学するなら、この方法が最善である。今留学を考えている人に対しては、会社が金を出してくれないなら、留学するのは、余程考えてからにすべきだと忠告したい。

また、日本の法科大学院に行くのは、どんなに頭をひねっても経済的な理由が見つからないと思った。特に、社会人が仕事を辞めて法科大学院に行くのは、自殺的である。法科大学院の場合、学費自体はアメリカのロースクールと比較すると安いが、収入が得られない期間が長すぎる。2年の法科大学院に行っても、修習が終わるまで収入が得られないとすると、4年近く得られるはずの収入が得られないのである。
また、転職が容易でなく、転職することで給料が下がる可能性が高い日本で、一旦会社を辞めることはリスクが高い。
特に、日本の社内弁護士の給料は一般の社員とほとんど変わらないのであるから、法科大学院を卒業して弁護士資格を得たからといって以前よりも多額の収入を得られることがない。つまり、いくら働いても働いても、学費と得られたはずの給料を取り戻すことができないのである。
結局失っただけになり、老後に、あの時に法科大学院にいっていなければ、もっと生活が楽だったかもしれないと後悔することになるのだろう。





2016年6月27日月曜日

こんなことになるとは思わなかった

英国で、EUを離脱することに賛成票を投じた人たちの中には、あまりの経済的な影響の大きさに驚き、もう一度投票をさせてほしいと言っている人もかなりいるようである。
経済的に大変なことになると、投票前に専門家があれほど警告していたのにも関わらず、そんなことはないと言い放つ政治家を信用して離脱に投票した人たちである。

この英国の出来事から、あの2000年の弁護士会のロースクール賛成、合格者3000人賛成決議に賛成票を投じた弁護士たちのことが思い出されるのは、私だけであろうか。

離脱に賛成票を投じた英国人と、ロースクールと3000人合格に賛成票を投じた弁護士との違いは、投票後に後悔していると本音を語るか、意地でも決議は正しかったと言い切るかである。

あの2000年決議の時、弁護士が一緒になって、ロースクール反対を訴えたらどうなっていたかと思うことがある。
ロースクールの設立は止められなかったかもしれないが、政策失敗が明らかになった直後から、弁護士会主導で、制度改革に向けて活動できたかもしれない。

2016年6月12日日曜日

学閥 その2

今の日本の法科大学院制度は、学閥を助長する要素があると思う。

定員割れが叫ばれているなか、入学試験を受けてくれる人をどれだけ確保できるかは、法科大学院としては死活問題である。
法科大学院の案内パンフレットに魅力的なことを書きたいと思う。
大学院を卒業した者のその後の進路が魅力的であることは応募者を増やすためには必須である。

そうするとどうなるだろうか。
法科大学院関係者は同じ大学院を卒業して弁護士になった人、同じ大学を卒業して企業の上の方で活躍している人に対して、うちの法科大学院出身者を雇ってほしいとお願いすることが考えられる。
「お願いします。うちの法科大学院の評価が高くなれば、あなたにとっても得になります。」


学閥はこのようにして助長されるのではないか。

2016年6月10日金曜日

学閥

私が弁護士になったもう20年くらい前の時代、友人に、弁護士の世界に学閥のようなものがあるのか聞かれたことがある。
確かに、歴史的に弁護士を多く輩出してきた大学には同窓生の法曹の集まりのような会があったが、弁護士会の中に俗にいう学閥のようなものは、私の記憶する限りなかった。

当時宝くじに当たる確率のようなあの低い合格率の司法試験に合格したこと、同じような2年間の修習を経たというだけで一体感があった。

どこかで弁護士に会うと、まずは
「先生は何期でいらっしゃいますか」と修習の期を聞くのが一般的で、次の会話は
「〇〇期でいらっしゃるのですか。それでは、〇〇先生をご存知ではないですか。」
「ああ、〇〇先生ですね。良く存じ上げております。この前も、、、」
と話が続くのが一般であった。

修習の時は、誰がどの大学出身なのか、皆知っているが、大学によって修習生が優秀かどうかの格付けが付くようなことはなかった。大学としてそれほど良い大学とされていない大学出身者であっても、大学在学中に司法試験に合格した人がいれば、有名大学を卒業したけれども司法試験合格に時間がかかった修習生は、尊敬の眼差しで、その短期合格者を見ていた。

法科大学院ができて、司法試験合格者が増えるということが決まった時、今後は学閥が幅を利かせるだろうと思った。
特に、司法試験に合格したというだけでは優秀と言えない時代になれば、どの大学、どの法科大学院を卒業しているかは、重大な判断基準である。優秀な大学や法科大学院を卒業した弁護士は、あまり良いとされていない大学や法科大学院を卒業した弁護士を見下すようになるだろうと考えた。
昔のような宝くじに当たるような確率の司法試験に合格して、2年間の充実した修習を経験したことによって一体感があった法曹界が変わるだろうと。

実際、今はどうなっているのだろうか。



2016年5月22日日曜日

人工知能が弁護士として事務所に就職する日

アメリカでは、既に、人工知能が弁護士法律事務所に就職する日が来たようだ。

アメリカの法律関係の有名なブログには、大手事務所が人工知能弁護士を雇用したと記載されている。破産法に関するプラクティスをするという専門分野まで決まっているらしい。

http://abovethelaw.com/2016/05/bakerhostetler-hires-a-i-lawyer-ushers-in-the-legal-apocalypse/


ROSSという人工知能弁護士で、IBMのワトソンという人工知能をもとにしているようだ。
http://www.rossintelligence.com/

最初のページにはSuper intelligent attorneyと記載されている。

アメリカでは、リーガルリサーチで何時間もアソシエイトやパラリーガルが時間をつけてクライアントに多額の弁護士費用を請求しているが、この人工知能を使ってリーガルリサーチをした場合、法律事務所はどの程度の費用を請求するつもりなんだろうか。
ブログによると若手弁護士がリーガルリサーチをして判例を分析してリーガルメモを作成する時間として15時間かかるのをROSSはあっという間にこなすと予測されている。


現在は、この人工知能が非常に高いことが予想されるので、人工知能を使ったサーチでも多額の費用を請求する根拠もあるだろうが、何年か経って、人工知能を採用する費用が安くなったら、どうなるのだろうか。企業が一人の社内弁護士を雇う代わりに人工知能を採用するという程度の値段になれば、企業は、人工知能を雇うかもしれない。そうすれば、法律事務所は人員削減に踏み切らなければならないだろう。

弁護士の将来はますます不透明になっている。弁護士だけではない、他にもリサーチを商売にしている業種は多数あり、同じような人工知能が既に開発されている、または将来開発されるであろう。


これからの若者は大変である。特に、年金のもらえる年齢が70歳になるのであれば、50年後を見据えて職業を選択しなければならない。将来を予想するのは非常に難しい。


間違っても、弁護士、特に日本の弁護士を選択するのは絶対にやめるべきだろう。初期費用がかかり過ぎるにもかかわらず、将来が全く見えない。また、初期費用が高いと、途中で状況が変わったときや、間違った選択だったと気づいたときに、他の選択肢を考えてみようという柔軟性が極端になくなる。


2016年4月30日土曜日

またアメリカの猿真似をするのか?

先日、日本の特許関係者と話す機会があった。
日本の特許関係者の中には、日本の特許出願件数が下がっているのは、日本の特許侵害訴訟の損害賠償額の低さにあるという議論があるようだ。さらには、日本の裁判所もアメリカを見習って、特許侵害訴訟の損害賠償額を上げるべきだ、懲罰的賠償を認めるべきだ、という議論まであるらしい。

確かに、アメリカで特許侵害訴訟の損害賠償額が100億円を超えることは珍しいことではない。日本とは雲泥の差である。そこで、アメリカで製品を販売する会社は、将来特許侵害訴訟で訴えられないように、自社の技術に関連する特許をなるべく多く取得しようとする。だから、世界各国の企業が必死になってアメリカで特許を取得しようとするのである。

またしてもアメリカの猿真似を考えている人々がいるようだ。
法科大学院をアメリカから輸入して失敗したのと同じように、日本の特許訴訟の損害額を高くしても、思った効果はないだろう。

アメリカでは、特許訴訟だけでなく、製造物責任訴訟、クラスアクション、様々な訴訟の危険があるが、多くの企業がアメリカ市場で販売するのをやめないのは、アメリカが魅力的なマーケットだからである。
中国でも、共産党国家ならではの危険があるが、多くの企業が中国での販売をやめないのは、中国が魅力的な巨大なマーケットだからである。

それと比較して、超高齢化社会が進み、今後市場が縮小することが予想される日本で、訴訟の危険を拡大させたら、どうなるだろうか。

危険が高くて魅力的でない市場から企業が引き上げていくだけである。

損害賠償額の引き上げは、魅力的な市場と不可分一体でなければならない。猿真似をしても思った効果は表れないのだ。



2016年4月28日木曜日

役職定年

最近、55歳が役職定年という大企業は多い。55歳になると、役員などまで出世した限定的な場合でない限り、今まで会社から与えらていた役職が引っぺがされて、役職がなくなるという恐ろしい制度だ。

会社によっては50歳が役職定年という会社もある。あと何年で役職定年と指折り数えられる年齢になった友人などは、既に役職定年した元上司を横目で見ながら自分があのようになるのも時間の問題と思っているようだ。元上司が今は自分の部下になったと話していた友人もいる。その元上司は、それからしばらくして転職したらしい。元部下の下で働くのは辛かったのかもしれない。

弁護士は、人から与えられた役職ではなく、自分で取得した資格なので、弁護士会費を払い続けられる限り、懲戒処分を受けるようなことをしなければ、人から引っぺがされることはない。そう思うと、弁護士という資格は悪くないかもしれないと思うこともある。

ただ、この「弁護士会費を払い続けられる限り」というのがかなり重くのしかかる。弁護士という肩書を維持するためだけの費用なら、費用対効果から考えてもコストがかかりすぎる。役職定年に達する年齢どころではなく、30代でも会費が支払えなくなって、弁護士資格を返上している人もいるくらいだ。

それと比較し、アメリカの弁護士資格なら、日本のようなべらぼうな会費がかかるわけではないので肩書維持のためだけに資格を維持できる。

会社に勤めている人が、会社から費用を出してもらって、アメリカのロースクールに留学させてもらえることがあったら、必ずアメリカの弁護士資格を取得して帰るべきだと思う。役職を失っても、名刺にアメリカの弁護士と明記することができる。

2016年4月27日水曜日

大手企業のリーガルコストは一向に下がらないだろう

しばらく更新していなかったが、このブログで、一番訴えたいと思っていたことは、3年前の下記の投稿である。


弁護士が増えることで価格競争になり、弁護士を安く使えるようになるというのが大企業から見た司法改革の目的であったような気がする。しかし、その目的は本当に達成されるのか疑問である。日本と比較したら信じられない数の弁護士を輩出しているアメリカを見ていると弁護士の数が増えることは、リーガルフィーを下げることにはつながらないのではないかと考えざるを得ない。日本にも今まで以上に高いリーガルフィーを支払わなければならない時代が到来するのではと思う。その理由は、一般に言われているような、弁護士が増えれば訴訟が増えるなどという短絡的なものではない。

まず、価格競争になるためには、マーケットに出回る製品の質にそれほど違いがないことが大前提となる。質が悪くて使い物にならない製品が多く出回っていて、極一部の製品のみ質が良いという認識がマーケットに広がっていれば、極一部の質の良い製品に人気が殺到し、その製品の価格が高騰することもありうる。

市場の極一部に質の良い製品があるのだが、それがどの製品なのか、専門家にしか分からないということになれば、専門家にお墨付きをもらった極一部の製品が値上がりするだろう。

さらには、製品として既に出来上がっているのではなく、注文を受けてから特注で製造されるもので、注文を決めた際にはうまく出来上がるかどうか分からないということになれば、特定の有名な職人に注文が殺到するだろう。有名な職人が一人で作るのではなく、職人の所属する会社がチームとして製造するということになれば、有名な職人が所属する会社がブランド化し、その会社に注文が殺到する。
 
司法改革の最大の成果は、弁護士の数は増えたが、質はまちまちであり、優秀な質の高い弁護士は極一部であるという共通の認識がマーケットに広がりつつあることだ。後で説明するが、この認識は、良し悪しを客観的に評価するのは非常に難しいリーガルサービスの特性とあいまって、弁護士費用を高騰させる役割を果たす。

さらに、リーガルサービスは、既に出来上がっている製品を購入するのとはかなり異なる。サービスを受ける前に最終的にどのようなサービスが提供されるか分からないし、誰がサービスを提供するかでサービス内容が大きく異なる。また、間違ったサービスが提供されると重大な結果が生じかねない。間違っていなくても、最高のサービスが提供されたかされないかによって結果に大きな差が出る可能性もある。特に大企業にとって、提供されたリーガルサービスが悪かったことで損失を被ることは甘受できるものではない。

これらは、リーガルフィーをあげるための必須条件となる。
弁護士の数は増えたが、質はまちまちであり、優秀な質の高い弁護士は極一部であるという共通の認識がある場合、法律事務所の選択に気をつけなければ、例えば80パーセントの割合で質の悪いリーガルサービスしか受けられないと分かったら、恒常的に弁護士を使う必要がある企業は法律事務所選択に神経をとがらせることになる。

リーガルサービスの特徴は、専門家でなければ客観的に質を評価することが非常に難しいこと、サービスの提供を受ける前にどのようなサービスを受けられるのか分かりにくいこと等々他のサービスと異なる点が非常に多い。良い法律事務所を選択すると言っても、それは口で言うほど易しいものではない。
リスクを避けたがる日本人の特徴から考えると、知名度があり、優秀との推定が働く弁護士(有名な法科大学院を卒業したか、予備試験合格者)しか採用しない事務所で、海外留学経験をして米国弁護士資格も有している弁護士が多くいる、元高裁判事経験者、元キャリア官僚出身者の弁護士もいる事務所を選択しておけば、まずは間違いがないだろうと考えがちである。そのような事務所を選んでおけば、法務担当者は事務所選択を誤ったと責任を負わされる可能性も低くなる。

サービスの良し悪しの判断が難しい市場で質にばらつきがあると、萎縮的な効果が発生する。
例えば、市場に30パーセントの優秀な弁護士がいたとしても、保守的な大規模中規模企業は、市場にいる30パーセントの優秀な弁護士に依頼するのではなく、例えば優秀そうに見える肩書きを持つ10パーセントの弁護士にしか依頼しなくなる。萎縮的な効果によって依頼が10パーセントの弁護士に集中するのである。
この萎縮的な効果により更なる問題が発生する。弁護士の数が増えたうえで、依頼が一部の弁護士に集中すると、弁護士であっても弁護士としての経験をつめなくなる弁護士の割合が激増することである。それは今までのように新人弁護士に限った話しではない。例えば離婚、相続、貸金返還などの事件処理の経験がいくらあっても、それだけでは企業法務にはほとんど役に立たないだろう。大企業が大手事務所を選択する傾向が強まると、小さい事務所に勤務している一般的な弁護士は企業法務の経験を全くつめなくなる。給付制、貸与制問題で、最終的には修習をなくそうという動きも出てくるだろう。修習がなくなれば、経験のあるなしという弁護士間での新たな格差が広がる。どの事務所に就職したかで弁護士としての経験が全く異なってしまう。小さな事務所では個人相手の事件の経験しか経ることができない。そうすると、小さい事務所を選択する危険がますます増大してしまい、企業が大手事務所を頼る傾向に拍車がかかる。

小さい事務所は、ブティック事務所という形で、特定の分野に特化して、企業のクライアントを持ち続けるか、一般市民向けのマチ弁事務所になるかという選択を迫られる。ただ、ブティック事務所は、その特定の分野の需要が経済情勢などから落ち込んだ時に、経営難から大手事務所に吸収される危険を抱えることになる。

大手事務所は、これからどんどん少数派になる優秀層の新人弁護士を自分のところに囲い込まなければならない。その時、強敵となるのが外資系、特に英米系法律事務所である。

優秀な人材を囲い込むには、二つの重要な条件がある。高い報酬と、優秀層がやりがいを感じられる仕事があることである。

外資系事務所で東京にオフィス(単なるリエゾンオフィスではなく)を有するのは英米でも巨大事務所と言われる事務所に限られる。弁護士のアワリーレートも高く、事務所内での競争も激しく、弁護士に対するノルマも厳しい。しかし、資金力があり、弁護士への報酬が格段に高い。また、英語を必須とするグローバルな仕事も結構あるので、弁護士としては仕事にやりがいを感じやすい。また、海外企業の日本関連の仕事を行うことも多く、クライアントや他の弁護士と英語でコニュニケーションをとるなど、日本の大手事務所とは違ったグローバル感覚を味わえる。

この点、大手の日本法律事務所は、外資系事務所にはかなわない。外資系に対しては厳しくディスカウント要求しないが日本の大手事務所に対してはディスカウント要求する日本企業は多い。日本法律事務所の主な収入源は日本企業であるが、外資系事務所の収入源は世界の有名企業である。つまり、大手であっても日本法律事務所は、英米系事務所ほど資金力がない。また、日本の大手事務所には留学経験者が多いとはいえ、たった1,2年の留学経験に過ぎず、渉外事件を英米系事務所の助けを借りずに処理できるだけの能力はないことが多い。つまり、外注に出すのである。大企業もそれは分かっており、大手事務所には、マンパワーが必要なM&Aなどの依頼に限って、グローバルな渉外事件は英米系事務所に直接依頼するところが多い。マンパワーが必要な仕事の歯車として働かされても、やりがいを感じることはあまりない。つまり、新人弁護士報酬の面でも、やりがいを感じる仕事の面でも日本の大手事務所は英米系法律事務所に見劣りしがちである。つまり、少なくなってきた優秀な新人弁護士が英米系事務所に流れる可能性が高くなってきたのである。

実はこれは新人弁護士に限ったことではない。既に業界で有名な弁護士に魅力的な条件を提示して大手事務所から引き抜くという英米系特有の方法もある。

日本資本の大手事務所は、英米系事務所が手薄なアジアに支店を出して巻き返しを図っているが、司法改革の失敗が放置され、これ以上優秀な新人弁護士が減り続けたら、英米系事務所に対抗できるのか分からない。


現在は、旧司法試験最後の質にばらつきがない世代が40歳代の弁護士として活躍しているが、この世代が50代後半になる頃まで司法改革の失敗がこのまま放置されれば、日本の法曹界の異変がはっきりと見えるようになるだろう。

質のばらつきが広がることで、弁護士というだけでは社会的信用を得られない。ブランド力のある事務所の弁護士であることが、社会的に信用を得るために必須となる。さらに、大手事務所に勤務する弁護士が勝ち組で、個人を相手とする弁護士やマチ弁は負け組みと揶揄する風潮が発生しかねない。今までは、小さなマチ弁事務所で採算の取れないような人権活動をやりたいと思う優秀な弁護士がいた。それは、弁護士は社会的に信頼され、尊敬される職業だという誇りがあったからであろう。マチ弁は負け組みと揶揄されるようになれば、優秀な弁護士は大手事務所や大企業以外で働くことを考えなくなるだろう。

資金力と仕事内容の面で圧倒的に優位に立つ外資系事務所が市場に数少なくなった優秀な弁護士を吸い上げるだろう。吸い上げられるのは新人ばかりではない。日本の大手事務所から経験弁護士をクライアントごと引き抜こうとする外資系事務所が発生するだろう。

こうなると、大企業は大手事務所、特に外資系事務所に依頼する傾向が強まる。この傾向が何を意味するかと言えば、余っている弁護士は大勢いても、企業法務をやる上で必要な実務経験をつめない弁護士が数多く発生するということだ。企業が弁護士の質と経験不足に不安を感じることで、高くても大手の有名な弁護士に依頼せざるを得なくなるだろう。

このブログでも何度も取り上げているとおり、外資系事務所、特に米国事務所はビジネスに長けている。事務所内部にマーケティング部があるのが通常なのだ。どのような経路をたどるか分からないが、最終的に彼らに多額のリーガルフィーを支払うことは避けられないであろう。それは、米国政府の圧力による制度の変更を伴うかもしれない。日本の事務所のように下手なディスカウント合戦で自滅したりしないことは確かである。

大企業もリーガルフィーを下げるために今より多くの社内弁護士を雇うという方針を決定するかもしれない。しかし、新人弁護士を雇ってもあまり役に立たない。社員を留学させて米国弁護士資格を取らせてみても、それだけでは役に立たない。外資系事務所等で最低3年から5年の実務経験を積んだ弁護士を社内弁護士として採用しない限り、社外弁護士の仕事を評価したり、社外弁護士に適切な指示をすることでリーガルフィーを減らすことはできないからである。もし、外資系事務所で3年から5年の実務経験を積んだ弁護士を社内弁護士として採用しようと思ったら、それなりの給料を支払わないわけにはいかないだろう。人間らしい生活がしたいので、少しくらい給料が下がっても社内弁護士に転身したいという人はいても、給料が2分の1や3分の1になってもいいという人はまずいないだろう。

競争の時代なのだから、安くする事務所は幾らでもあるだろうという反論があるかもしれない。しかし、質のばらつきが広がれば広がるほど、安かろう悪かろうという推定が働く。安売りをしている事務所には軽々しく依頼できなくなる。
 
大企業は、ある程度思い切った給料を支払って、経験のある社内弁護士を雇い、さらには、ビジネスに長けた英米系事務所にかなりの額のリーガルフィーを支払わざるを得ないような時代がやってくるだろう。

弁護士が増えたのだからリーガルフィーが高くなるなんてことはありえない思うかもしれないが、掃いて捨てるほど弁護士がいるアメリカで時給が10万円を超える弁護士に依頼する大企業が多くいるのである。現にアメリカで法的問題が発生したときに、安さを売りにしている小さな事務所に依頼している日本の大企業があるだろうか。

弁護士を安く雇いたいという動機が垣間見る司法改革であったが、最終的には、大企業が支払うべき全体としてのリーガルフィーが格段にあがってしまうという皮肉な結果に終わるのではないかと予想する。


2016年2月22日月曜日

社労士も大打撃では?

法曹とは若干ずれるが、もしアメリカに社労士という資格があったら、今頃もうそれは過去のものになっていただろうと思うサービスがアメリカの会社では一般的に利用されている。

そのようなサービスを行う会社のウエブサイトを見てみると、同じ会社が日本にも進出しているようなので、御紹介しようと思う。

アメリカでは、オンラインで、タイムカードのチェックをし、それをもとに、残業代を含む給料を計算し、管理者が2週間ごとに働いた時間を確認した後、コンピューターによって各従業員の給与計算をし、控除する税金を計算し、計算した額をもとに銀行口座から税金を支払い、各従業員の銀行口座に給与を振り込み、給与明細をサービスを受ける会社に郵送するというサービスを利用している会社が一般的である。
年末に各従業員が税金申告をするための書類も作って、郵送してくる。
タイムカードをパンチできるコンピュータのマックアドレスを登録して、他のコンピュータからパンチインできないようにすることもできる。
サービスを受けると、従業員一人について、いくらという計算であるが、社内で専門の人を雇ったり、日本の社労士のような人のサービスを受けることを考えたら、安いものである。

各州によって、法律と税金が異なるアメリカであるが、簡単なことであれば、質問もできる。
こういうサービスを利用するのは小規模な企業だけかと思うかもしれないが、従業員が何百人単位でいるような会社もこのサービスを利用している。

給料や税金の支払い元の口座を持つ銀行も、ビジネスの内情を把握できるという利益もあいまってか、同じようなサービスに乗り出すところも出てきているようだ。

このようなサービスを提供する会社としてADPと、Paychexという会社はよく聞くが、ADPは、日本向けのサービスも始めているらしい。

http://japanese.adp.com/solutions/employer-services/streamline.aspx

このようなサービスを受けることが日本の中小企業で一般化したら、社労士はひとたまりもないのではないかと思う。