2013年8月15日木曜日

司法改革の最終的被害者は大企業になるのでは? - その3



つづき。。。

大手事務所は、これからどんどん少数派になる優秀層の新人弁護士を自分のところに囲い込まなければならない。その時、強敵となるのが外資系、特に英米系法律事務所である。

優秀な人材を囲い込むには、二つの重要な条件がある。高い報酬と、優秀層がやりがいを感じられる仕事があることである。

外資系事務所で東京にオフィス(単なるリエゾンオフィスではなく)を有するのは英米でも巨大事務所と言われる事務所に限られる。弁護士のアワリーレートも高く、事務所内での競争も激しく、弁護士に対するノルマも厳しい。しかし、資金力があり、弁護士への報酬が格段に高い。また、英語を必須とするグローバルな仕事も結構あるので、弁護士としては仕事にやりがいを感じやすい。また、海外企業の日本関連の仕事を行うことも多く、クライアントや他の弁護士と英語でコニュニケーションをとるなど、日本の大手事務所とは違ったグローバル感覚を味わえる。

この点、大手の日本法律事務所は、外資系事務所にはかなわない。外資系に対しては厳しくディスカウント要求しないが日本の大手事務所に対してはディスカウント要求する日本企業は多い。日本法律事務所の主な収入源は日本企業であるが、外資系事務所の収入源は世界の有名企業である。つまり、大手であっても日本法律事務所は、英米系事務所ほど資金力がない。また、日本の大手事務所には留学経験者が多いとはいえ、たった1,2年の留学経験に過ぎず、渉外事件を英米系事務所の助けを借りずに処理できるだけの能力はないことが多い。つまり、外注に出すのである。大企業もそれは分かっており、大手事務所には、マンパワーが必要なM&Aなどの依頼に限って、グローバルな渉外事件は英米系事務所に直接依頼するところが多い。マンパワーが必要な仕事の歯車として働かされても、やりがいを感じることはあまりない。つまり、新人弁護士報酬の面でも、やりがいを感じる仕事の面でも日本の大手事務所は英米系法律事務所に見劣りしがちである。つまり、少なくなってきた優秀な新人弁護士が英米系事務所に流れる可能性が高くなってきたのである。

実はこれは新人弁護士に限ったことではない。既に業界で有名な弁護士に魅力的な条件を提示して大手事務所から引き抜くという英米系特有の方法もある。

日本資本の大手事務所は、英米系事務所が手薄なアジアに支店を出して巻き返しを図っているが、司法改革の失敗が放置され、これ以上優秀な新人弁護士が減り続けたら、英米系事務所に対抗できるのか分からない。既に、大手より若干規模の小さい日本の事務所のなかには、英米系事務所の一部になった事務所もでてきている。


この傾向が、なぜ、本稿のタイトルである「司法改革の最終的被害者は大企業になるのでは?」につながるのだろうか。

つづく。。。
司法改革の最終的被害者は大企業になるのでは? - その4